2021/10/20
ベルギービールを語る上で外せないのが、トラピストビールと呼ばれるビールたち。
その濃厚かつ独特の味わいが、ベルギービールが日本で広がる上で欠かせない役割を果たしています。
トラピストビールは、トラピスト会修道院で作られるエールビールで、協会によって定められた規則を尊守して作られています。
ヨーロッパでは、かつて飲料用の水を確保するのが難しかったため、保存のきく飲料としてビールが修道院によって作られ、修道院を訪れた人々や周囲の人々に振る舞われてきました。
その規則は厳格で、修道院の敷地内で修道院自らまたは監督の元で醸造され、販売は非営利、収益は修道院のメンテナンスや運営費用、事前団体に寄付等のみに使用されるというもの。
現在はベルギーをはじめとして世界に171あるトラピスト修道院のうち、12箇所で生産されています。
なおトラピスト以外の修道院のビールはアビイビールと呼ばれ、民間の醸造所が委託生産しているビールなども含みます。
トラピストビールやベルジャンゴールデンなど、濃厚な味わいや高アルコールのビールのイメージの強いベルギービール。
しかしながら現地でも最も多く飲まれているのは、日本でも親しまれている、すっきりとした味わいのピルスナータイプのビールだったりします。
ベルギーはアヘル村にあるベネジクトゥス修道院で醸造されるトラピストビール。
ブロンド・ブラウンを始めとした5種類のビールが作られていますが、うち2種類は修道院内のみで提供されています。
トラピストビールの中では比較的オーソドックスな味わいで、爽やかな香りと力強いボディが特徴。
アヘルブロンドは、モルトの甘みとフルーティーで花を思わせるホップフレーバーにバナナのエステリーな香り。
軽い飲み口とバランスの良い苦み、アルコール度数8%のしっかりとしたボディがお楽しみいただけます。
ベルギーはシメイにあるスクールモン修道院で醸造されるトラピストビール。
スクールモン修道院では1862年より醸造を開始、院内の醸造所で敷地内に設置された井戸水を使用して作られています。
レッド、ホワイト、ブルー、ゴールドの4種類が作られ、それぞれが個性のある魅力のある味わい。
シメイホワイトは1966年に神父が考案したレシピによって誕生した銘柄で、シメイの中で最もドライでビターなタイプのビール。
オレンジがかった濃いブロンドの色合いに、りんごやあんず、マスカット、柑橘系のフルーティーなアロマ。
ホップの効いたドライで苦みのある味わいで、ほのかにバニラやカラメルの甘みも感じられます。
アルコール度数は8%ですが、軽い酸味もあり飲みやすくバランスの良い仕上がりです。
シメイブルーはもともとクリスマスビールとしてリリースされたものが人気を博し、現在は通年作られるようになっています。
Alc.9%、濃厚なカラメルのアロマと香ばしい果実の甘み、スパイシーな風味に深い味わい。
あとに残る苦味が長い余韻をお楽しみいただけます。
オルヴァル修道院で造られているトラピストビール。
トラピストビールの中ではめずらしく、流通しているのはこの一種類のみ。
修道士用に造られているオルヴァル グリーンは、修道院近辺のカフェでのみ提供されています。
オルヴァルといえばこのエピソード、と言われるほど有名なとある伝説。
1076年に、イタリアはトスカーナ地方のマチルド・トスカーナ伯爵夫人がこの地を訪れた時、亡き夫の大切な結婚指輪を泉の中に落としてしまいました。
『もし指輪が返ってきたら、お礼にこの地に修道院を建てる』と聖母マリアに祈りを捧げると、一匹の鱒が指輪をくわえて姿を現し、無事に指輪が戻ってきました。
これが修道院を建てるきっかけとなり、伝説の指輪をくわえた鱒がラベルに描かれているのです。
ドライホッピングによるホップの個性を感じさせる味わいが特徴的で、さわやかなホップの香りと、フルーティーな香りが楽しめます。
ドライな中に甘味と酸味と苦味が複雑に絡み合い、トラピストビールの最高峰と言われる程の素晴らしい味わい。
ベルギーはサン・レミ修道院で醸造されるトラピストビール。
サン・レミ修道院で醸造しているビールは3種類で、ハイアルコール&コクのある味わいが特徴。
それぞれ6, 8, 10と数字が振られていますが、発効前の麦汁の比重(初期比重)の数値で1060, 1080, 1100となっています。
Rochfort 6
年1度のみの醸造で生産量が少なく、フルーティーな香りと赤ワインのような複雑なアロマが特徴。
Rochfort 8
アルコール度数は9.2%、液色はブラウン。複雑な甘みのある香りとまろやかで深みのある甘みと苦み。
Rochfort 10
アルコール度数は11.3%、液色はダークブラウン。
熟した果実の香りやコーヒーの香り、ブランデーのようなアロマがあり、より複雑味のある濃厚な味わいに仕上がっています。
ウェストマールは、1836年に修道士が自分たちだけの飲用として醸造を開始したのが始まり。
1870年には地元の村に限りビールの販売をスタートし、1920年から本格的に商業用に醸造されるようになったという歴史のあるビールです。
ダブル、トリプルの2種類を醸造していますが、特にトリプルが有名で、1934年に最初に醸造されて以来「すべてのトリプル・ビールの母」と呼ばれています。
トリプルスタイルのビールは、通常の3倍の材料を使うことでハイアルコールに仕上げられており、普通はハイアルコールになればなるほど色は濃くなるのですが、ウェストマールトリプルは黄金色。
バナナのようなフルーティーな香りに、きめ細かい泡が柔らかくとてもクリーミー。
フルーティーかつドライなビールで、甘味・旨味・苦味のバランスが整った複雑な味わいです。
Yasutaka Higaki 桧垣泰隆
目黒リパブリック Burger & Beer 目黒
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