ラガヴーリン蒸留所 スコッチモルトウイスキー解説評価 / 吉祥寺 Vision

2022/04/19

ラガヴリン

ラガヴーリン蒸留所について、徹底解説していきます。

 

ラガヴーリンの地理

生産国:スコットランド
地域:アイラ

 

ラガヴーリン蒸留所データと蒸留設備

所有者:ディアジオ社
設立年:1816年
年間生産能力:253万リットル
仕込水:ソラン湖の泉
糖化槽:ワンバッチ4.4トン
発酵槽:カラ松10基
蒸留器:初留2基、再留2基
熟成庫:約5000樽をアイラ島で熟成、それ以外は本土の熟成庫

 

ラガヴーリンの解説

ラガヴーリン蒸留所は1816年創業の蒸留所で、蒸留所の名前の由来は「水車小屋のある窪地」を意味するゲール語から来ています。
ラガヴーリン蒸留所はアイラ島の南岸にあり、アードベッグ、ラガヴーリン、ラフロイグと3つの蒸留所が並んでいることから「キルダルトン三兄弟」などと言われています。
かつては密造の中心地だったらしく、10以上の密造酒の蒸留所があったとのことで、これは湿地帯で人がなかなか踏み込めない場所にあること、多くの暗礁が船の航行を困難にしていたからと言われています(当時密造の摘発は船から行われていたとのこと)。

蒸留所を創業したのはジョン・ジョンストン氏で、ラフロイグを創業したジョンストン兄弟の父親とも伝わっています。しかし、ジョン氏が亡くなり、グラスゴーのワイン&スピリッツ商のアレクサンダー・グラハム氏が買収。さらにジェームズ・ローガン・マッキーがオーナーとなります。
このジェームズ氏の甥のピーター・マッキーが修行を積み、後にオーナーとなります。

ピーター・マッキー氏は1889年に蒸留所を相続、翌年の1890年にホワイトホースを発売します。
これはラガヴーリンをキーモルトとしており、当時としては飲みやすさを求めていたブレンデッドウイスキーとしては珍しい味わいとなりました。
そのピーター氏率いるホワイトホース社が1927年にDCLに買収され、以降、現在のディアジオ社に引き継がれる形となっています。

ピーター氏はあだ名が「レストレスピーター」と呼ばれ、エネルギッシュで休まないとして業界からも有名で、ラガヴーリンの職人の筋力アップにこっそりプロテインを混ぜて働かせていたという逸話も残っています。

ラガヴーリンは、1974年にフロアモルティングをやめて、それ以降はポートエレンから麦芽を購入しています。
面白いのが、ラガヴーリンはカリラと全く同じ麦芽の34〜38ppmの麦芽を使用しているということで、蒸留設備や作り方の違いにより2つの蒸留所の味の違いが楽しめる点です。
発酵時間は55時間と現在の他の蒸留所と比較するとやや短め、ポットスチルはくびれのないオニオンシェイプのスチルが初留再留で各2基で合計4基。
ラインアームは下向きとなっています。
このくびれのない蒸留器と下向きのラインアームが蒸留器内での蒸留液の戻りが少なく、かつラインアームまでたどり着いた蒸留液はすぐに冷却器へと向かうので、リッチで力強い風味を生んでいます。

ラガヴーリンはアイラ島でラフロイグに次ぐ2位の売上を誇っています。
一時はボウモアに抜かれたそうですが、これはラガヴーリンの主力商品が16年と熟成年数が長く、生産に時間がかかること、及び単価が高くなることが影響していたそうで、現在は8年熟成をラインナップに加え、2位に返り咲いています。

 

ラガヴーリンのラインナップ

ラガヴーリン 16年

ラガヴーリン 16年

一番スタンダードなラガヴーリン。
力強いピートの風味と、16年の樽熟成からくる甘さが絶妙で、当店でも人気が高く、固定ファンが多いボトルです。

 

ラガヴーリン 12年 リミテッドリリース2018

ラガヴーリン 12年 リミテッドリリース 2018

毎年1回リリースされる、12年のカスクストレングスです。ボトリング年が記載されており、毎年少しずつ味が違い、その年の出来栄えを楽しみに待つという楽しみ方ができる1本。
こちらのボトルは2018年ボトリングと少し年数が経っていますが、パワフルでスイートなフレーバーがあり、人気の1本です。

 

ラガヴーリン ディスティラーズエディション 2020

ラガヴーリン ディスティラーズエディション 2020
こちらも毎年1回リリースされるボトルで、ペドロヒメネスカスクフィニッシュ。
ラガヴーリンの力強いピートと、ペドロヒメネスの濃厚な甘さは大変相性がよく、人気のシリーズとなっています。

 

ラガヴーリンの年表

1816年 ジョン・ジョンストン氏が蒸留所を創業
1825年 ジョン・ジョンストンが隣接する蒸留所のアードモアを引き継ぐ
1836年 ジョン・ジョンストンが亡くなり、2つの蒸留所が合併し、ラガヴーリン蒸留所として運営。グラスゴーのワインとスピリッツ商のアレクサンダー・グラハム氏が蒸留所を買収
1861年 ジェームズ・ローガン・マッキー氏がパートナーとなる
1867年 ジェームズ・ローガン・マッキー社により蒸留所が買収され、改修工事を開始
1878年 ピーター・マッキー氏がスタッフとなる
1889年 ジェームズ・ローガン・マッキー氏が亡くなり、甥のピーター・マッキー氏が蒸留所を引き継ぐ
1890年 ジェームズ・ローガン・マッキー社が名前をマッキー社に変更。ピーター・マッキーがラガヴーリンをブレンドしたホワイトホースを輸出市場に投入
1908年 ピーター・マッキーが古い蒸留所の建物を利用して、跡地に新しい蒸留所の「モルトミル」を建設
1924年 ピーター・マッキーが亡くなり、マッキー社は名前をホワイトホース社に変更
1927年 ホワイトホース社がDCLの傘下に入る
1930年 蒸留所がSMD社の管理下に入る
1952年 爆発的な火災が発生し、大きな被害が出た
1962年 モルトミル蒸留所を閉鎖、現在はラガヴーリンのビジターセンターとして利用
1974年 フロアモルティングを廃止し、代わりにポートエレンからモルトを購入
1988年 ラガヴーリン16年が6つのクラシックモルトの一つとなる
1998年 ペドロヒメネスシェリーフィニッシュをディスティラーズエディションとして発売
2002年 12年と25年の2つのカスクストレングスを発売
2006年 30年熟成を発売
2010年 新エディションの12年と、マネージャーズチョイスシングルカスクを発売
2011年 第10弾の12年カスクストレングスを発売
2012年 第11弾の12年カスクストレングス、21年熟成を発売
2013年 37年、第12弾の12年カスクストレングスを発売
2014年 フレンズオブクラシックモルトとしてトリプルマチュアードを発売、第13弾の12年カスクストレングスを発売
2015年 第14弾の12年カスクストレングスを発売
2016年 8年熟成、25年熟成を発売
2017年 新エディションの12年カスクストレングスを発売
2018年 18年熟成をアイラフェス向けに発売
2019年 19年熟成をアイラフェス向けに発売、9年熟成をゲーム・オブ・スローンズ・ハウス・オブ・ラニスターとして発売、10年熟成を免税店向けに発売
2020年 11年熟成オファーマンエディション、1991年プリマ&ウルティマ、アイラフェス向けに20年熟成を発売
2021年 オファーマンエディション第2弾、アイラフェス向け13年熟成、28年プリマ&ウルティマ、26年熟成を発売

 

Wataru Kobayashi  小林渉

Vision  Whisky bar 吉祥寺
0422-20-2023
Google Map  武蔵野市吉祥寺本町1-11-8 耶馬ビルB1
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