モルトウイスキーの製造・原材料について / 吉祥寺 Vision

モルトウイスキーの原材料

モルトウイスキーの製造について記載しようと思います。
ただ、いきなり製造について書く前に、まずは原材料について書いていこうと思います。

 

 

1. スコッチウイスキーの中のモルトウイスキーとは?

モルトウイスキーとは、スコッチウイスキーというスコットランド国内で造られているウイスキーの中で、大麦麦芽を原材料に使用して、単式蒸留器で蒸留されたウイスキーのことをいいます。
スコッチウイスキーには他に、大麦麦芽だけではなく他の穀物も使用し、連続式蒸留機で製造した「グレーンウイスキー」というものがあります。モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドすると、「ブレンデッドウイスキー」になります。

ここで面白いポイントが、「大麦麦芽を使用して連続式蒸留機で造られた場合、グレーンウイスキーに分類される」ということです。

 

2. モルトウイスキーの原材料

モルトウイスキーの原材料は、大きく3つあります。
1, 大麦麦芽
2, 水
3, 酵母
です。

大麦麦芽は、その名前の通り、大麦をいったん発芽させ、発芽したタイミングで熱を加えて乾燥させて成長を止めたものです。
細かくは後述します。

 

3. モルトウイスキーに使われる大麦について

大麦

大麦

モルトウイスキーに使われる大麦は、二条大麦を使うのが一般的です。
大麦には他に六条大麦というものがあり、違いは、1本の茎に対して、麦の粒が2個ずつ並んでつくものが二条大麦、6個ずつ並んでつくのが六条大麦です。
上の画像の1枚めが二条大麦、2枚めが六条大麦です。

二条大麦は、六条大麦のうち麦4つ分が退化して、その分の栄養が2つの粒に集中したものです。そのため、二条大麦のほうが1粒が大きくなります。
粒が大きいということは、二条大麦には炭水化物が多く含まれます。炭水化物(糖分)を分解してアルコール発酵させたものがお酒になるので、炭水化物が多いほうが効率よくお酒が作れます。

ただし二条大麦を使用することのデメリットもあります。二条大麦には炭水化物の分解に必要な糖化酵素が六条大麦より少ないのです。
しかし、完全に無いわけではないので、少ない糖化酵素を最大限活用する形でウイスキーを作ります。そのために必要なのが「麦芽にする」という工程で、麦芽にすることにより、大麦の中の糖化酵素が多くなります。その糖化酵素が多くなったタイミングで乾燥させてウイスキーの原材料にします。

 

4. 二条大麦について

麦芽は常に品種改良をされており、よりウイスキーに向いた麦を開発しています。
ウイスキーに向いた麦とは、炭水化物が多くアルコールが作りやすいこと、病害などに冒されにくく、生産量が多い麦です。

実はスコットランドはウイスキー用の麦の産地としてはあまり適さない場所だそうで、そのためウイスキーの原材料に使われる大麦は、イングランド、ドイツ、フランスなどの他のヨーロッパ諸国から輸入しています。
スコットランドは北緯が高いため気温が低く、日照時間が短く、また雨が多いという特徴があり、大麦が病害に侵されたりするリスクが高いのです。

それが度重なる品種改良により、1968年に初めてスコットランド産の大麦で実用に耐えるものが開発されました。その品種を「ゴールデンプロミス種」といいます。それ以降徐々にスコットランド産大麦を栽培するようになってきていますが、実は今でも海外からの輸入量のほうが多いそうです。
ただし、こだわりのある蒸留所は、スコットランド産の麦だけを使用する方針などを打ち立てて製造しています。

二条大麦は品種改良により、どんどんアルコールが取れる量が多くなっています。それを「アルコール収量」といい、「LPA/トン麦芽」で表します。LPAとはリッターピュアアルコール、つまり1リットル当たり100%換算のアルコールが何リットル取れるかという単位です。

古代品種のベア種は260程度だったのに対し、ゴールデンプロミスは385〜395、現在の優良品種と言われるオプティックは410〜430と向上しています。

 

5. 六条大麦で造られるウイスキーは無いのか?

実は、六条大麦で造られるウイスキーもあります。
ベア種という古代品種と言われる麦が、粗六条大麦と言われ、19世紀までは使われていたと言われています。
二条大麦よりも生産効率が良くないので、現在は使われることは殆ど無いですが、一部限定的に使われて、限定ボトルとしてリリースされることがあります。
現在、ベア種はオークニー諸島で栽培されているそうで、オークニー諸島の蒸留所のハイランドパークが以前リリースしました。
また、ブルックラディがいろいろな大麦を実験的に蒸留してみるという試みでベア種を使用し、限定リリースしたことがあります。

 

6. 日本のウイスキーに使われている大麦

実は日本のウイスキーに使われている大麦も海外から輸入しています。
多くはスコットランドで麦芽にしてもらったものを輸入しそのまま使用しています。
しかし、日本にもやはり「日本産の大麦麦芽を使用してウイスキーを作りたい」という人がいて、現在少しずつ製造されています。
代表的なのが秩父蒸留所で、埼玉県の契約農家に大麦を作ってもらい、オール埼玉産を目指しています。商品化された時を楽しみに待ちましょう。

 

7. 仕込み水について

仕込水

スコッチウイスキーには軟水が使われることが多いです。
「軟水のほうがウイスキーづくりに向いている」とよく言われます。
ただし、中硬水を使用している蒸留所もあります。

水が軟水になるか硬水になるかは、その地質に影響します。
地質が石灰岩層だと、石灰岩の成分であるカルシウムとマグネシウムが多く水に溶けて、硬度が高まります。
それに対して、スコットランドは「ピート層」と言われる地質です。
ピートとは、1万5千年以上前にその地域に生えていた植物が堆積して炭化したものです。
それらにはカルシウムやマグネシウムがほとんど含まれないため、軟水になります。
中硬水を使用している蒸留所は、たまたまその地域の水源が中硬水だったということや、その蒸留所の味を作り出すのに試した結果中硬水のほうが向いていたなど、いろいろな事情があるようですが、中硬水だから美味しくないということは全く無いです。
ウイスキーに馴染みのある方なら、下記に上げる中硬水を使用する蒸留所の名前を見て、「美味しくないということは全く無い」といい切ってしまうのに納得するのでは無いでしょうか?

中硬水を使用する蒸留所
・ザ グレンリベット
・グレンモーレンジィ
・ハイランドパーク
・スキャパ
・オーバン
・ストラスアイラ
・グレンキンチー

 

8. 水についてのちょっとしたお話

酵母

当店では、ウイスキーセミナーを実施しています。私が一人で喋り倒すこともあれば、ゲストスピーカーとしてブランドアンバサダーの方にご来店いただくケースもあります。
その中で、とあるブランドアンバサダーがおっしゃっていた言葉を下記に記載します。
「山崎蒸留所は水が良いから美味しいと言われる。確かに水が良いかもしれないが、水が良いからと言っていいウイスキーができるわけではない。
その水にあったウイスキーを造ることができるウイスキー職人の技術が素晴らしいから山崎は美味しい。
本当に素晴らしいのは山崎の水ではなく山崎の職人だ」

 

9. 酵母について

酵母はウイスキーを作る上で直接の原材料としては扱われないことが多いのですが、あえてここで触れてみます。
酵母は、自然に普通に存在する野生酵母と、特定の目的で特定の性質を利用するために培養される純粋培養酵母があります。
メインでウイスキーで使用されるのは純粋培養酵母です。
また、酵母は、ブルワリー酵母(ビール用)、ベーカー酵母(パン用)、ディスティラリー酵母(蒸留酒用)という種類があります。
もともとウイスキーは、ビールを作ったあとの余剰分を利用して造られていた歴史があり、ブルワリー酵母を使っていた時期があるのですが、1950年代にディスティラリー酵母が開発されてからはディスティラリー酵母中心となっています。
また、ウイスキーには使われませんが、シェリーの醸造に使われる産膜酵母というものもあります。

 

10. スコットランドの酵母事情

実はスコットランドでは酵母を製造(培養し販売)している業者というのが数少なく、また、各蒸留所で自家培養するということもしていないため、酵母の研究はあまり進んでいないとも言われます。
日本はサントリーだったり、ニッカはアサヒビールが親会社だったりと、ビールの業者のため、ビール用の酵母開発のための研究が進んでいます。

ちょっと勝手な推測を推し進めると、スコットランドの各蒸留所は、仕入元を分散化させるとコストがかかるなどの事情により、同じオーナーの蒸留所は同じ酵母を使っているということも多いのではないかと推測します。
そこから、同じオーナーの蒸留所の味を徹底的にテイスティングしたら、共通の味、つまり酵母由来の味がわかるのではないかと期待しています。
まだしっかり味の差がわかるところまでは行かないのですが、1980年代のボウモアとオーヘントッシャン、グレンギリーは同じオーナーで、なんとなくその時代のものを飲むと共通の味を感じる気がします。酵母の勉強はまだ途中のため、今後新しい情報があったら書いていきたいと思います。

 

Wataru Kobayashi  小林渉

Vision  Whisky bar 吉祥寺
0422-20-2023
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