モルトウイスキーの製造・貯蔵から瓶詰めについて / 吉祥寺 Vision

ウイスキーの貯蔵から瓶詰

 

引続きモルトウイスキーの製造について解説させていただきます。
まだ、これまでのブログをご覧になっていない方はこちらからどうぞ。

 ・モルトウイスキーの製造・製麦から糖化について 

 ・モルトウイスキーの製造・発酵から蒸留について 

 

ということで今回は、貯蔵から瓶詰についてです。

 

1. 貯蔵

貯蔵

さて、蒸留が終わり、樽熟成に向いた部分の中留をとった状態の蒸留液は、次の工程の貯蔵に回されます。
モルトウイスキーは、木樽にて3年以上熟成させることが義務付けられています。
3年未満の熟成のものは、ウイスキーとは呼べず、「スピリッツ」として販売されるケースもあります。

樽熟成させることによる作用としては、
・酸化熟成が進行する
・エステル化が進行する
・アルコールと水成分の会合が進行する
・樽材成分が溶出する
・アルコール、水、及び未熟臭が外界へ蒸散し、アルコール度数、容量が変化する。
などがあげられます。

樽熟成の進行は、3つの変化が段階的かつ同時進行で行われます。
ちょっと分かりづらいですが、説明していきます。
まず最初に「揮発」が起こります。これはイオウ化合物やカルボニル化合物と言われる蒸留したての不快な香りが揮発し、刺激臭が少なくなっていきます。
その次に、「化学的変化」がおこります。
これは時間をかけて穏やかに酸化反応が進行し、味に円みが増します。また、樽材成分が溶出し味が複雑化、アルコールや酸がエステル化することでウイスキー独特のフルーティーなフレーバーを生み出します。
「エステル」というのは、ざっくりと「フルーツのようないい香り」と思っていただいて大丈夫です。
このエステル化により得られるフルーツの香りの幅がかなり広いです。

更にその次に、「物理的変化」が起こります。これはアルコールと水分子が会合してクラスターを形成。
これにより口に含んだときに刺々しい味にならず、上品で旨味の強いウイスキーになります。
これは、それぞれが同時進行に起こるのですが、樽熟成は長期間に及ぶため、揮発による変化が最初に顕著に現れ、その次に段階的に化学的変化、物理的変化が顕著になります。
ある程度いろいろな酒類のウイスキーを飲んでいる方であればなんとなくイメージできるのではと思います。

これに世の中出でているウイスキーを当てはめていくと、
・3年以上の熟成が義務付けられているというのは、揮発による不快な香りがだいたい感じなくなるのが3年。
・世の中に12年〜18年熟成くらいのウイスキーが多いのは、化学的変化でフルーティな香りが十分に出るのが12年くらい。
・高級ウイスキーは25年熟成以上のものが多いのは、物理的変化まできっちり待ったものがそのくらい。
という形になりmす。

 

2. 樽熟成時の積み方

貯蔵2

モルトウイスキーの貯蔵庫の樽の積み方は大きく3つに分類されます。

最も伝統的なものがダンネージ式という方法で、土の上に木のレールを2本敷き、その上に樽を横向きに載せ、その樽の上に更に2本のレールを敷いてその上に樽を積む、と言うやり方で3段まで積み上げる方法です。
これはスコットランドの多くの蒸留所で取られている熟成方法です。

次にラック式という方法があります。
これは、金属のラックを組み上げ、その中に樽を収めていく方法で、樽を3段以上積み上げることができるため、大型の熟成庫で大量熟成させるのに向いています。日本の蒸留所がラック式を多く導入しています。
3つ目が、パラタイズ式です。
これは、パレットの上に縦に樽を並べて、パレットに載せた樽をどんどん積み上げていくタイプで、省スペース大量熟成に向いています。
ただし、下のほうの樽の負担が大きくなるため、漏れやすいなどのデメリットがあります。
これは、1つの蒸留所で大量にウイスキーを造るアイリッシュに多く見られます。

ただし、ここ最近のウイスキーブームで熟成庫の建設が追いつかないなどの理由で、本来はダンネージ式なのだけど、仕方なくそこから溢れた分はパラタイズ式で積んでいるなど、一概にこの蒸留所はこの方式で熟成していると言い切れるものではなくなってきているようです。

 

3. 樽の種類(木材)

ウイスキーの樽に使われる木材は、
・ホワイトオーク
・コモンオーク
・セシルオーク
・ミズナラ
の4種類があります。
その中でもホワイトオークが殆どで、約9割のウイスキーがホワイトオークを使用していると言われています。
コモンオークは別名ヨーロピアンオーク友いい、コニャックやブランデーの樽で使用されます。
独特の重厚さや渋みがあることから、マッカランなどの一部の蒸留所が意図的に使用しているケースもあります。
セシルオークは主にワインに使われる樽です。最近は、ワイン樽で追加熟成をされたものも多く出回ることから、ウイスキーでも使われる様になってきています。
ミズナラは日本で使われる事がある樽ですが、加工しにくく漏れやすいなど、ウイスキーに向いていない特徴があります。
ただ、ミズナラの樽で熟成させたウイスキーは伽羅や白檀のようなフレーバーが付き、その独特の風味にファンが多くいます。

 

4. 樽の種類(樽の履歴)

スコッチウイスキーの場合、樽熟成には新たに組み上げられた新樽を使うことはほとんどなく、何かを熟成させたあとの樽を使います。
代表的なものが、バーボンを熟成させたあとのもの(バーボン樽)と、シェリー酒を熟成させたあとのもの(シェリー樽)です。

もともと、スコッチウイスキーの樽熟成に使われていたのはシェリー酒の空き樽であるシェリー樽でした。
それがウイスキーの増産に伴いシェリー樽が不足したことから、第二次世界大戦後にバーボン樽も使われるようになっていきます。
現在は、より多様化により、ワイン樽やポートワイン樽なども使われるようになってきています。

また、バーボンやシェリーをを熟成させたあと、スコッチを1回目詰めるときを「ファーストフィル」、そのスコッチを瓶詰めしたあともう一回その樽にスコッチを詰めることを「セカンドフィル」もしくは「リフィル」と呼びます。このようにして、樽は何度も使われ、約100年使われると言われます。
また、熟成用の樽として使い終わった樽は、家具やインテリアに作り変えられたり、燻製チップになったり、ボールペンになったりなど、いろいろな目的で再利用されています。

 

5. 樽の種類(樽の大きさ)

樽には様々なサイズがあります。サラッとサイズだけ書きます。
バレル:約200リットル
ホグスヘッド:約250リットル
バット:約500リットル
パンチョン:約500リットル
クオーター:約125リットル
オクタブ:約62.5リットル

さて、上記のようなサイズになっている理由を説明します。
もともとはスコッチに使われる樽はシェリー樽でした。シェリー酒の熟成はは500リットルのバットが使われます。
そのためスコッチの熟成にもそのままバットが使われます。
その後バーボン樽が入ってきます。バーボンは200リットルのバレルを使って熟成させます。
そのためそのまま使われるケースもあります。ただし、スコッチはバーボンより長期間熟成させるので、樽が小さいとその分揮発も早くなるためスコッチの熟成に向きません。
そのため、200リットルのバレルをいったん分解し、250リットルのホグスヘッドに一回り大きく作り変えて熟成させるのが主流です。
大きさもバットのちょうど半分のため管理もしやすかったのだと思います。
その後、より熟成を早く進めるため、その半分のクオーター、そのさらに半分のオクタブが作られます。
さて、ではパンチョンはというと、バットより少し胴が短く、太さがある樽で、これは日本のサントリーが多く作っているものです。多少バットより遅く熟成が進むと言われており、スコットランドより温暖な日本の気候に合わせたものと言われています。現在はスコッチでもたまに見かけます。

 

6. 天使の分け前(エンジェルズシェア)

熟成期間中、ウイスキーは少しずつ揮発して液量が減っていきます。
量が減っていく中で少しずつ美味しくなっていくことから、それを天使の分け前と呼んでいます。なんかロマンチックですね。
一般的には1年で2〜3%が減ると言われていますが、気温や湿度により大きく差が出ます。
最近は、この天使の分け前が2%のときと3%のときでは、最終的に熟成が終わったときに残る液体の量が大きく違ってくるため、商品化できる量が変わるということから、一部蒸留所では、なるべく2%に抑えようという、天使の分け前をケチる研究が進んでいるとか。なんかロマンが無いですね。

また、樽にウイスキーを入れたときに、木材に染み込んでいってしまう量のことを、悪魔の取り分(デビルズカット)というそうです。ただ、木材にちゃんとウイスキーが染み込むから樽の木の成分が溶出してくるわけで、悪魔にもウイスキーを美味しくする役割があるんです。

 

7. 瓶詰め

瓶詰

さて、ウイスキーは最後に瓶詰めされる事により商品になります。
瓶詰めにもいくつかの種類や方法があるので説明していきます。

 

8. ブレンディング

シングルモルトウイスキーは、その蒸留所内で製造され、熟成された樽はブレンドして良い事になっています。
そのため、製品化の際には複数の樽をブレンドすることで味を一定に保っています。
熟成年数を表記するときは、ブレンドした樽の中で一番熟成年数が短い年数を表記するルールになっていますので、例えば12年熟成のものは12年以上熟成されたものしか入っていないことになります。
このブレンド作業はブレンダーと呼ばれる専門家が行います。ブレンダーは樽からサンプルを取り、その情報を記載した小瓶をズラッと並べ、どういう比率でブレンドするかを検討します。
また、ブレンダーは、例えば12年熟成のウイスキーの味を安定的に作るためには、12年後にこういう味の樽が無いといけないという形で、製造計画にも大きく関与しています。非常に重要な役割です。
ブレンドせずにリリースされるケースもあります。これを「シングルカスク」といいます。ブレンドせずに出せるという大変素晴らしい出来上がりのウイスキーということですね。

 

9. 冷却濾過

製品化されるウイスキーの一部の商品は冷却濾過を行うものがあります。
これは、ウイスキーはいろいろな成分が溶け込んでいる中で、冷やすと白濁してしまう成分が含まれており、これが不良品扱いされることを防ぐためです。
冷却濾過はマイナス8℃からプラス5℃くらいの温度で行います。このとき温度が低いとそれだけ多くの成分が取り除かれます。
ただし、この取り除かれる成分もウイスキーの味を形成しているもののため、味わいが薄くなるということから冷却濾過をせずに出すものがあります。これを「ノンチルフィルター」といい、ラベルをよく見るとそう書かれているものを見つけることができるかもしれません。

 

10. 加水

ウイスキーを樽から出した状態のアルコール度数は、熟成の進み具合により変わります。だいたい12年熟成で55%くらいでしょうか。
そのまま瓶詰めされてリリースされるケースもありますが、飲みやすいアルコール度数に水を加えて40%〜46%くらいに薄めるのが一般的です。これを「加水」と呼びます。
樽から出したまま瓶詰めされるケースは、「カスクストレングス」といいます。

 

11. カラメル着色

ウイスキーは色が濃いほうが美味しいと思われるケースが多かったことから、カラメルで着色して良い事になっています。
それ以外にもブレンドして出来上がったウイスキーの色が前回のロットと微妙に違うケースで少し着色して調整するなどという目的でも使われます。
着色は自然ではないということから、最近は実施しない蒸留所も多く、「ノンカラーリング」などとラベルに書かれていたりします。

 

12. 実際の瓶詰め

瓶詰め工場は多くは物流に便利なローランドにあり、そこまではタンクローリーなどで運ばれたり、樽のまま持ち込まれたりします。
多くの蒸留所は瓶詰め設備を独自で持っていないため、瓶詰め専門の工場などに依頼したり、大手は独自の設備で実施したりしています。
ちなみに蒸留所に瓶詰め設備を持っているのは、グレンフィディック、スプリングバンク、ブルックラディ、キルホーマン、グレングラント、ロッホローモンドがあります。今後増えるかもしれません。

さて、ここまでウイスキーの製造工程を細かくご紹介してきます。
長文、全部読んでくださった方いるのでしょうか。いらっしゃったらありがとうございます。

 

Wataru Kobayashi  小林渉

Vision  Whisky bar 吉祥寺
0422-20-2023
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