2021/10/18
*2023/3/2追記
当店とグループのウイスキー量り売り専門店、恵比寿ウイスキーショップ で、当記事で紹介しているスプリングバンクの量り売りセットが限定リリースされました。*23/3/2現在
今回は、スコッチウイスキーの主要生産地の一つ、キャンベルタウンをご紹介します。
キャンベルタウンとは、キンタイヤ半島の先端部分に位置する街の名称です。
キャンベルタウンは、アーガイル公キャンベルという現在もスコットランドの大貴族でクランキャンベル氏族長にちなんでつけあっれた街で、人口は約5000人。
かつては30を超える蒸留所があったと言われていますが、現在は3つの蒸留所のみとなっています。
キャンベルタウンを語る上で外せないのが、竹鶴政孝氏です。
1918年〜1920年にかけて、スコットランドに単身ウイスキーづくりを勉強しに留学した竹鶴政孝氏は、スコットランド上陸後、多くの蒸留所に見学、実習の依頼を行いますが、ほとんどの蒸留所が日本人に技術を盗まれることを懸念して断られます。そんな中、3ヶ月という短期間ですが実習を受けることができたのが、キャンベルタウンのヘーゼルバーン蒸留所(現在は閉鎖)です。
ヘーゼルバーン蒸留所で実際に蒸留を行い、またその設備や運営方法などを事細かにメモをし、報告書として持ち帰ったものが通称「竹鶴ノート」と呼ばれる文章です。
キャンベルタウンは、19世紀にはウイスキーの一大生産地として発展しました。
しかしながら、1920年〜33年のアメリカ禁酒法により、主要な販売先だったアメリカ市場を失ったこと、アメリカで流通する粗悪な密造酒に勝手にキャンベルタウンモルトという呼び名が使われ、キャンベルタウンモルトの評判を著しく落としたことなどがあげられ、その間に多くの蒸留所が閉鎖し、第二次世界大戦後まで残っていた蒸留所はスプリングバンクとグレンスコシアの2箇所だけになってしまいました。
スプリングバンク蒸留所は、伝統的な製法により高品質を維持し、その評判から生き延びた形になります。グレンスコシアはその後も閉鎖と買収を重ね、なんとか生き延びているという状況です。
竹鶴政孝氏が実習したヘーゼルバーンもなくなってしまっており、無くなる直前の僅かな期間に実習がかなったことは大変に幸運だったといえると思います。
また、そのような状況のため、スコッチウイスキーの中でも生産量はかなり少なく、2015年のデータではスコッチウイスキー全体に対し、わずか0.6%しかキャンベルタウンは生産できていないという状況となっています。
この数値は、2021年の現在までに他の地域の蒸留所がウイスキーブームに乗り大きく生産量を増やしている状況のため、より少なくなっていると推測されます。
キャンベルタウンモルトといっても、ほとんどがスプリングバンクと言っても過言ではない状況です。
スプリングバンク蒸留所は、伝統的なフロアモルティングを実施しており、しかもスコッチの中でも唯一麦芽を100%自家製麦を行っている蒸留所です。
この徹底的に伝統的な製法に基づいた高品質を売りにしており、手間がかかるため、生産量は他の蒸留所と比べても少なくなってしまっています。
ただし、その味わいに対する評価は大変高く、生産量の少なさもあいまって、日本では輸入され、発売されたら即完売だったり、価格も徐々に高騰しています。
10年くらい前であれば、酒屋で普通に見かけ、ハイボールなどで気軽に飲めたスプリングバンク10年も、現在は6000円を超える価格となっています。
それでも品薄状態が続いているため、味わいの評価は多くのウイスキーファンに認められているといえます。
1828年創業の蒸留所で、創業者はレイド家ですが、すぐに現在のオーナーのミッチェル家が買収、そのまま現在まで続いています。
唯一100%自家製麦を行っている蒸留所で、伝統的な製法にこだわりを持って、少量生産高品質な蒸留所です。
3つのブランドを作り分けており、ピートを少し焚いた麦芽で2.5回蒸留で作る「スプリングバンク」、ノンピートで3回蒸留の「ヘーゼルバーン」、ピートを強く焚いた麦芽で2回蒸留の「ロングロウ」の3つとなっています。
ヘーゼルバーン、ロングロウともに、もともとキャンベルタウンに実際にあった蒸留所の名前を使用していますが、存在していた当初そのような作り方をしていたというわけではなく、ブランド名としてだけ使用しているようです。
スプリングバンク 12年 カスクストレングス
一番スタンダードなスプリングバンクは10年ですが、現在大変品薄です。
12年のカスクストレングスは、大体年に1回輸入されるボトルで、今年のリリースは56.1%です。
スパイシーでオイリー、塩っぽさと甘さが共存する大変素晴らしいボトルです。
スプリングバンク 15年
こちらは加水の46%です。
熟成も程よく進み、甘さの中にいちごのようなフルーツの香りが感じられるボトルです。
スプリングバンク ローカルバーレイ 10年
こちらも年1回リリースされているボトルで、スコットランド産の麦芽だけを使用した特別リリース。
毎年使っている麦芽と樽、熟成年数が違い、今回は100%シェリー樽のかなり甘めな仕上げとなっています。
ロングロウ
年数表記なしのロングロウ。
ピートの強さは35ppmくらいで、アイラのピートと比較してかなり土っぽさを感じる面白いボトルです。
1872年創業の蒸留所で、スプリングバンクの共同経営者のウィリアム・ミッチェル氏が建てた蒸留所。その後1925年に閉鎖してしまいましたが、2004年に再度スプリングバングの現オーナーの手で再建されました。
ただし、蒸留設備などはすべて解体されていたため、中古品などを集めて再建、また、麦芽の精麦は同じオーナーであるスプリングバンクが行っている形を取っています。
発売されているウイスキーには「キルケラン」という名前がつけられていますが、これはグレンガイルという名前が商標上他の会社が持っており、使用できなかったため、グレンガイル蒸留所の窓から見える教会の名前を取った形になります。
ラベルにかかれている、窓の先に見える教会のデザインはそこから取られています。
キルケラン 8年 カスクストレングス
スプリングバンクよりやや強めのピートを焚くことにより、塩っぽさをより強く感じられるウイスキーです。
加水のものもリリースされているのですが、現在当店にはこちらの8年カスクストレングスが在庫があります。
1835年創業の蒸留所ですが、キャンベルタウンの衰退とともに1930年代に閉鎖。
その後1980年代まで閉鎖状態が続きますが100万ポンドの巨額をかけて大規模改修され再開、しかし1984年にすぐにまた閉鎖されてしまったというほぼ稼働していなかった蒸留所です。
現在はロッホローモンド社が所有し、蒸留を再開しており、まれにリリースされるのですが、かなり数は少なく、日本でも流通が殆どない蒸留所です。
いかがでしたでしょうか。
ちなみに、スプリングバンクを飲んだあと、余市を飲むと、私はなんとなく共通点が見いだせるように思うのですが、それは竹鶴さんの原点がこのキャンベルタウンにあるのかなと思っています。
ぜひお試しください。
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