2007/09/17
さっそく手にとって、中を覗いてみる。。カバーの折り返し部分に、こうある。
「私の国には学校へ向かいながらチョコレートをかじる子供がいて、
ここには学校にも行けず、生きるために働かなければならない子供がいる。
少年たちの瞳に映る問いは、両者の間の果てしない溝を浮かび上がらせる。
なんと皮肉なことか。私の国で愛されている小さなお菓子。
その生産に携わる子供たちは、そんな楽しみをまったく味わったことがない。
おそらくこれからも味わうことはないだろう。
・・・これは私たちの生きている世界の裂け目を示している。
カカオの実を収穫する手と、チョコレートに伸ばす手の間の溝は、埋めようもなく深い。」
(本文より)
衝撃が走りました。胸を打ちました。自称ショコラホリックのあたくしに。
あっという間に読み進めました。半分涙ぐみながら、また怒りに震えながら。。
アフリカ中西部に位置するコートジボアール共和国。かつてフランス領時代に
象牙海岸と呼ばれたこの国は、全世界で消費されるカカオ豆の43%を産出しています。
カカオ産業は文字通り国家の主力産業で、カカオなくしては、独立もあり得ないくらい。
しかし、カカオを栽培するプランテーションには、10代、中には10歳にも満たない子供が、
自転車をやるぞと騙されたり、誘拐されたりして農園に連れて来られ、
厳しい監視のもと一日14~15時間もの肉体労働をさせられ、
夜は狭いコンテナのなかに数人単位で押し込まれて眠ります。
逃げ出すコトなど、とうてい考えられない状況で。
中には、貧しさから親の手によって事業者に売られて来た子供もいるのです。
いわゆる人身売買ってやつです。強制労働と人身売買。なんてことだ。。
彼らは自分たちが何を栽培しているのかも知らないのです。
自分たちが育てた豆から何が作られているのかを知らないのです。
自分に課された過酷な労働が、先進国の人々が愛するお菓子であることも、
チョコレートの味はおろか、チョコレートが何なのかさえも知らないのです。。
子供たちに過酷な労働を強いているこの産業は、しかしながら、コートジボアールの
人々にとって不可欠の生命線でもあるのは事実です。
農園でカカオ豆を育て、サンペドロの港でヨーロッパやアメリカの業者に売り渡す。
その豆がどこに行くのか、何になるのかなど彼らは知らない。
それが彼らの生活であり、生きる方法なのです。
チョコレートメーカーは長年、この児童労働の過酷な実態について見てみぬふり。
この問題をアメリカ国務省が2000年に批判、一時は注目が高まったものの、
同国の内戦等のごたごたの中で問題は忘れ去られ、むしろ状況は、一層混迷を増し、
労働者も不足し、そして、黙認されていく児童労働によって生産されたカカオを
輸入する企業がつくったものを食べているのです。あたくしたち。
とても考えさせられました。
一人の子を持つ父親として。。
一人のチョコレート好きな消費者として。。
一人のチョコレートを扱う飲食サービスの人間として。。
こうした問題は、誰にでも良くないことだと分かるし、簡単に解決できないことも分かる。
ただ、問題ですっ!と叫んでいてもどうにもなりません。
具体的な問題解決の糸口を僕は知りません。でも単に「問題だ」と騒ぐことも、
「見てみぬふりする」ことも、問題の本質を見ない点では同じコトのように思います。
まず必要なのは、問題の本質、構造と要因、そして我々自身との関係を知るコトから
はじめるしかないのかも知れません。
ぜひ、知ってください。感じてください。地球の裏側の真実を。。
甘いチョコレートの裏に隠された、苦い真実を。。
そこから何かが変わるかも知れないから。。