ラフロイグ蒸留所 スコッチモルトウイスキー解説評価 / 吉祥寺 Vision

2023/09/06

ラフロイグ

ラフロイグ蒸留所について、徹底解説していきます。

 

1. ラフロイグの地理

生産国:スコットランド
地域:アイラ

 

2. ラフロイグ蒸留所データと設備

所有者:ビームサントリー社
設立年:1815年
年間生産能力:330万リットル
仕込水:キルブライト湖
ワンバッチ:5.5トン
発酵槽:ステンレス6基
蒸留器:初留3基、再留4基
熟成庫:

 

3. ラフロイグの解説

ラフロイグ蒸留所は1815年創業の蒸留所。
蒸留所の名前の由来はゲール語で「広い入江の美しい窪地」を意味する言葉です。
創業はアレクサンダーとドナルドのジョンストン兄弟で、その後1954年までジョンストン家によって運営されてきました。
一族の最後の末裔であるイアン・ハンターが母親と叔母の経営を助けるためにアイラ島に戻ってきたのが1908年で、その後約50年にわたってイアン・ハンターが運営してきました。
その間、ラフロイグの販売権を持っていたラガヴーリン蒸留所のピーター・マッキーから販売権を取り戻した結果、ピーター・マッキーと揉め、ラガヴーリン蒸留所内にラフロイグと全く同じ設備を持つモルトミル蒸留所を建設、ラフロイグ潰しを実施しましたが、出来上がったウイスキーがラフロイグとは違う味だったためその後放置され、1962年に閉鎖しています。
ラフロイグの現在のスタイルの「主力商品の10年にはファーストフィルのバーボン樽しか使わない」というこだわりはイアン・ハンターが決定し、これは北米市場向けにセールスを行った際に、バーボンの空樽をスコッチに使えないかと考え、それを取り入れたからと言われています。

その後あとを継いだのが、イアン・ハンターの右腕と言われたベッシー・ウィリアムソンで、ベッシーはスコットランド初の女性の蒸留所長、経営者でした。
ベッシーはイアン・ハンターの秘書として雇われ、ウイスキーづくりが全く無知だったところから蒸留所長にまでなったと言われています。
ベッシーの時代に蒸留所の拡張、増産が行われました。

ベッシーのリタイア後、ウィットブレッド社、アライド社と経営権が移り、現在はビームサントリーが所有しています。

ラフロイグはワンバッチは5.5トン。
麦芽はフロアモルティングで自家精麦された麦芽を15%と残りはポートエレン製の麦芽と僅かに本土産の麦芽をブレンドしています。
自家精麦麦芽は45〜55ppmなのに対し、ポートエレン製は35〜40ppmです。
マッシュタンはフルロイタータンで、得られる麦汁は2万7000リットルでその2回分を一緒にして1基のステンレス発酵槽で発酵、酵母はマウリのリキッドイーストで発酵時間は55時間です。
蒸留器は7基で、数はアイラ島最大ですが、サイズが小さく、特に再留器の3基は最小サイズとなっています。形状はくびれの強いランタンヘッド(初留はストレート)でラインアームも15度ほど情報に曲げられていて還流を生む工夫がされています。
ミドルカットは72〜61%とかなり下のほうまで取ることで、ピートのフレーバーが強く残るような作りとなっています。

ラフロイグは生産量の70%がシングルモルトで残り30%がブレンデッド用となっています。
チャールズ国王(当時皇太子)のお気に入りで、シングルモルトとしては唯一皇太子のワラントを授かっています。そのためラベルにはプリンス・オブ・ウェールズの紋章が印刷されています。

 

4. ラフロイグのラインナップ

ラフロイグ10年

 

Laphroaig 10y
ラフロイグ 10年

一番スタンダードなラフロイグ。
ファーストフィルのバーボン樽で熟成され、やや強いバーボン樽の樽感と、独自のピート採掘場から取れたピートを自家精麦で使用している事による強い薬品香が際立った特徴。
モルと初めての人には薦められないのですが、飲んでみると一発でハマる人と、全くだめという人に分かれるボトルです。

 

Laphroaig 2013 9y Carn mor
ラフロイグ 2013 9年 カーンモア

モリソン&マッカイ社がリリースするカーンモアシリーズのラフロイグ。
やや軽めで、グレープフルーツのような柑橘フレーバーと強い薫香のバランスが、爽やかさを出しているボトルです。

 

5. ラフロイグの年表

1815年 アレクサンダー&ドナルド・ジョンストン兄弟が蒸留所を創業
1836年 ドナルドがアレクサンダーから買収し蒸留所を引き継ぐ
1837年 ジェームズとアンドリュー・ガイアフィールドがラフロイグの目と鼻の先でアルデニスティエルを見つける
1847年 ドナルド・ジョンストンが蒸留所の事故で死亡。隣接するラガヴーリンの支配人のウォルター・グラハムが後を継ぐ
1857年 ドナルドの息子のドゥガルドが買収した際に、運営がジョンストン家に戻る
1877年 ドゥガルドが跡継ぎがいない状態で高いし、いとこのアレクサンダーと結婚した妹のイザベラが後を継ぐ
1907年 アレクサンダー・ジョンストンがなくなり、蒸留所は二人の姉妹のキャサリン・ジョンストンとウィリアム・ハンター夫人(イザベラ・ジョンストン)が引き継ぐ
1908年 イアン・ハンターが母と叔母の蒸留所を手伝うためにアイラ島に到着
1924年 蒸留器を2基から4基に増設
1927年 キャサリン・ジョンストンがなくなり、イアン・ハンターが蒸留所を引き継ぐ
1928年 イザベラ・ジョンストンがなくなり、イアン・ハンター一人がオーナーとなる
1950年 イアン・ハンターがD.ジョンストン社を創業
1954年 イアン・ハンターがなくなり、蒸留所運営をエリザベス・ベッシー”・ウィリアムソンが引き継ぐ
1967年 シーガー・エヴァンス社がロングジョン社を通じて蒸留所を買収
1972年 ベッシー・ウィリアムソンが引退。蒸留器を2基追加し、合計7基に。
1975年 ウィットブレッド社がシーガー・エヴァンス社(このときの名前はロングジョンインターナショナル)をシェンリーインターナショナルから買収
1989年 ウィットブレッド社のスピリッツ事業がアライドディスティラーズに売却される
1994年 フレンズオブラフロイグを設立
1995年 10年カスクストレングスを発売
2001年 40年を発売
2004年 クオーターカスクを発売
2005年 フォーチューンブランドが新しいオーナーになる
2007年 1980ヴィンテージ、25年を発売
2008年 カーディス、トリプルウッドを発売
2009年 18年を発売
2010年 カーディスマスターエディションを発売
2011年 ラフロイグPXカスク、カーディス‐アイリークエディションを発売
2012年 ブローディア、カーディスオリジンを発売
2013年 QAカスク、アンカンモア、25年カスクストレングス、カーディスポートウッドエディションを発売
2014年 ラフロイグセレクトを発売
2015年 21年、32年シェリーカスクを発売、15年を再発売
2016年 ロア、カーディス2016、30年を発売
2017年 フォーオーク、1815エディション、27年を発売
2018年 28年、カーディスフィノを発売
2019年 30年を新シリーズのイアン・ハンターストーリーとして発売
2020年 イアン・ハンターストーリーチャプター2、カーディスポートカスク、カーディスワインカスク、16年を発売
2021年 10年シェリーオークフィニッシュ、イアン・ハンターストーリーチャプター3を発売
2022年 イアン・ハンターストーリーブック4を発売

 

Wataru Kobayashi 小林渉

Vision Whisky Bar ヴィジョン
吉祥寺/東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-8 耶馬ビルB1
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