ボウモア蒸留所 スコッチモルトウイスキー解説評価 / 吉祥寺 Vision

2022/05/17

ボウモア

ボウモア蒸留所について、徹底解説していきます。

 

ボウモアの地理

生産国:スコットランド
地域:アイラ

 

ボウモア蒸留所データと蒸留設備

所有者:ビームサントリー社
設立年:1779年
年間生産能力:200万リットル
仕込水:ラーガン川
糖化槽:ワンバッチ8トン
発酵槽:オレゴンパイン6基
蒸留器:初留2基、再留2基
熟成庫:

 

ボウモアの解説

ボウモア蒸留所はアイラ島の中心地のボウモア町の海辺に建っています。
ボウモアとはゲール語で「大いなる岩礁」を意味する言葉で、”モア”が大きいという意味の単語です。
創業は1779年で現在ではアイラ島で最も古い蒸留所、スコッチ全体では1775年創業のグレンタレットに次ぐ2番めに古い蒸留所です。
創業者は島の商人のデイビッド・シンプソンで、ボウモア町ができた11年後に建てられました(ボウモア町は1768年にできた)
ボウモア町の中心にはラウンドチャーチと言われる円形の教会が建っており、これは悪魔が隠れる場所が無いように円形にして街を見張るという意味があると言われていますが、もう一説としては寄付をせずに帰る町民を見張るという話もあるようです。

ボウモア蒸留所の特徴は伝統的なフロアモルティングを現在でも行っていること。
フロアモルティングで製造している麦芽の量はボウモア蒸留所で使用する麦芽の約30%で、残りはスコットランド本土のシンプソンズ社から購入しています。
フロアモルティングで使用している麦芽はアイラ島産ではなく、島外からの輸送ですが、製麦のすべての作業ができるようになっています。
ピートは独自のピートボグ(採掘場)から切り出しており、ピートボグが島の中心部のやや高台にあることから、ラフロイグやポートエレン製麦所が使う海辺近くのヨード臭の強いピートではなく、やや乾いた穏やかなピートスモークが特徴です。
フェノール値も25〜30ppmで、ポートエレンの34〜38ppmよりやや弱めとなっています。

ボウモアの仕込みはワンバッチ8トンで、5.5トンをシンプソンズ製、2.5トンを自家製麦でブレンドして作られます。
シンプソンズ製の麦芽も同じフェノール値のものを購入しています。
それをもともとジュラ蒸留所で使用されていた中古のセミロイタータンで4万リットルの麦汁を取り、これを1基の発酵槽に移して発酵。発酵時間は60時間と90時間の2種類を製造しています。
これを蒸留器に入れて蒸留するのですが、再留時のミドルカットが71〜68.8%と非常に高く設定しているのが特徴で、これはピート由来のフェノール香は度数が低い部分に乗るため、それを極力抑える形の設定となっていると思われます。
(これは私の見解ですが、通常の蒸留所が60%台まで取るのに対し68.8%しか取らず、ミドルカットで取れる度数の幅が2.2%というのは、他の蒸留所と比較して純粋に生産量が4分の1以下になるということで、そんな無駄なことをするのかと言うのが疑問です。
取材したウイスキー文化研究所に確認したのですが、現地蒸留技師がそう言っているということでそのまま数値を記載しているそうです)

樽詰めは63.5%で行われ、ダンネージ式2棟とラック式1棟の熟成庫で熟成されます。ボウモアには創業当時からあるNo.1ヴォルトという第一熟成庫があり、これは厚さ1メートルの石壁と、海にせり出すような形で建設されているのが特徴で、満潮時には海面に1メートル沈むこともあるそうです。
この熟成庫から数々の伝説的なボトルが生まれており、有名なブラックボウモアもその一つです。

さて、脱線ですが、2000年前後に発売されていたボウモアは、ソープやパフュームの香りがするということで敬遠されていましたが、現在はそのようなフレーバーがするウイスキーが貴重ということで、大変高値で取引されています。パフューム香が発生した原因はネットを検索すると大変様々な人が様々な自説を書いています。
どれを信じるかはご自身で判断されるのが良いかと思うのですが、私も自説がありますので、それはもしご興味あれば店頭でご質問ください。

 

ボウモアのラインナップ

ボウモア12年

ボウモア 12年

最もスタンダードな一般流通しているボウモアです。
軽いピート感と樽熟成の甘さから、白桃のようなフレーバーがあります。

 

ボウモア 10年 ダーク&インテンス

ボウモア 10年 ダーク&インテンス

シェリーホグスヘッド樽により熟成されたボウモアで、他のボウモアと比較して甘さがあるのが特徴。

 

ボウモア 2002 12年 シグナトリービンテージ

ボウモア 2002 12年 シグナトリービンテージ

老舗ボトラーズの一つのシグナトリーからリリースされている加水のボウモア。
非常にフルーティなフレーバーがあり、オフィシャルのボウモアと比較テイスティングすると面白い1本です。

 

ボウモアの年表

1779年 ボウモア蒸留所がデイビッド・シンプソンにより創業。現在アイラ島最古の蒸留所となる
1837年 蒸留所がグラスゴーのジェームズ&ウィリアム・ムターに売却される
1892年 追加工事を行った後、蒸留所がイングランド人のビジネスマンによる企業共同体のボウモアディスティラリー社に売却される
1925年 J.B.シェリフ社が買収
1929年 DCLが買収
1950年 ウィリアム・グリコール&サンズ社が買収
1963年 スタンリー P.モリソンが蒸留所を買収、モリソンボウモアディスティラリー社となる
1989年 サントリーがモリソンボウモアの35%の株を購入
1993年 伝説的なブラックボウモアを発売
1994年 サントリーがモリソンボウモアの全株式を購入
1996年 ボウモア1957(38年熟成)を40.1%でボトリング、しかし2000年まで発売されなかった
1999年 オロロソバレルで3年追加熟成をおこなったボウモアダーケストを発売
2000年 ボルドーバレルで2年追加熟成をおこなったボウモアダスクを発売
2001年 ポートパイプで2年追加熟成をおこなったボウモアドゥーンを発売
2002年 1964年蒸留37年熟成フィノカスクを300本限定で発売(希望小売価格1500ポンド)
2003年 1964フィノに続き、1964バーボン、1964オロロソをリリース。ウッドトリロジーが完結
2005年 1989蒸留16年熟成バーボン樽、1971蒸留34年熟成を発売
2006年 1990蒸留16年熟成オロロソ、1968蒸留37年を発売
2007年 18年熟成を発売、1991蒸留16年ポート、ブラックボウモアを発売
2008年 ホワイトボウモア、1992蒸留ボルドーフィニッシュを発売
2009年 ゴールドボウモア、モルトマンズセレクション、ライムリグ、発売
2010年 40年熟成、1981蒸留を発売
2011年 1982蒸留、ニューバッチのテンペストとライムリグを発売
2012年 100プルーフ、スプリングタイド、免税店向け1983蒸留を発売
2013年 デビルズカスク、23年ポートカスク、1984蒸留を発売
2014年 ブラックロック、ゴールドリーフ、ホワイトサンズを免税店向けに発売
2015年 ニュー・エディションのデビルズカスク、テンペスト、50年熟成ミズナラカスクフィニッシュを発売
2016年 9年熟成、10年熟成空港免税店向け、ボウモアヴォルトエディション、ブラックボウモアのファイナルバッチを発売
2017年 No.1を3種の空港免税店向けボトルと同時発売
2018年 ヴィントナーズトリロジーを発売
2019年 ヴォルトエディションピートスモーク、21年免税店向け、36年ドラゴンエディションを発売
2020年 ブラックボウモアDBSを発売
2021年 タイムレス27年、31年を発売

 

Wataru Kobayashi  小林渉

Vision  Whisky bar 吉祥寺
0422-20-2023
Google Map  武蔵野市吉祥寺本町1-11-8 耶馬ビルB1
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