2022/12/27
ベルギーをはじめとして世界に171あるトラピスト修道院のうち、10箇所でのみその呼称を使うことが許されているトラピスト・ビール。
修道院内に醸造所を持ち、協会によって定められた厳格な規則を尊守して作られています。
ヨーロッパでは、かつて飲料用の水を確保するのが難しかったため、保存のきく飲料としてビールが修道士によって作られ、修道院を訪れた人々や周囲の人々に振る舞われてきました。
濃厚で複雑な味わい、他のビールのお手本になるような素晴らしいビールたちをご紹介いたします。
ベルギーはシメイにあるスクールモン修道院で醸造されるトラピストビール。
スクールモン修道院では1862年より醸造を開始、院内の醸造所で敷地内に設置された井戸水を使用して作られています。
シメイブルーはもともとクリスマスビールとしてリリースされたものが人気を博し、現在は通年作られるようになっています。
Alc.9%、濃厚なカラメルのアロマと香ばしい果実の甘み、スパイシーな風味に深い味わい。
あとに残る苦味が長い余韻をお楽しみいただけます。
シメイで最初に作られたビールで、シメイの元祖と呼ばれているシメイレッド。
赤みがかった濃いブラウンの外観に、華やかな香りと芳醇な味わいがバランスの良い仕上がり。
アルコール度数は7%で、カシスやレーズンのようなフルーティーな香り、丸みのあるコクのある味わいがお楽しみいただけます。
シメイホワイトは1966年に神父が考案したレシピによって誕生した銘柄で、シメイの中で最もドライでビターなタイプのビール。
オレンジがかった濃いブロンドの色合いに、りんごやあんず、マスカット、柑橘系のフルーティーなアロマ。
ホップの効いたドライで苦みのある味わいで、ほのかにバニラやカラメルの甘みも感じられます。
アルコール度数は8%ですが、軽い酸味もあり飲みやすくバランスの良い仕上がりです。
オルヴァル修道院で造られているトラピストビール。
とある伝説が由来で修道院の名前がつけられたことで有名です。
1076年に、イタリアはトスカーナ地方のマチルド・トスカーナ伯爵夫人がこの地を訪れた時、亡き夫の大切な結婚指輪を泉の中に落としてしまいました。
『もし指輪が返ってきたら、お礼にこの地に修道院を建てる』と聖母マリアに祈りを捧げると、一匹の鱒が指輪をくわえて姿を現し、無事に指輪が戻ってきました。
これが修道院を建てるきっかけとなり、伝説の指輪をくわえた鱒がラベルに描かれているのです。
ドライホッピングによるホップの個性を感じさせる味わいが特徴的で、さわやかなホップの香りと、フルーティーな香りが楽しめます。
ドライな中に甘味と酸味と苦味が複雑に絡み合い、トラピストビールの最高峰と言われる程の素晴らしい味わい。
ベルギーはサン・レミ修道院で醸造されるトラピストビール。
数字は発酵前の麦汁の比重(初期比重)を表していて、ロシュフォール 8の初期比重は1080となっています。
アルコール度数は9.2%で、液色はブラウン。
複雑な甘みのある香りと、まろやかで深みのある甘みと苦み。
初期比重1100の麦汁から作られるロシュフォール 10のアルコール度数は11.3%で、液色はダークブラウン。
熟した果実の香りやコーヒーの香り、ブランデーのようなアロマがあり、より複雑味のある濃厚な味わいに仕上がっています。
ウェストマールは、1836年に修道士が自分たちだけの飲用として醸造を開始したのが始まり。
1870年には地元の村に限りビールの販売をスタートし、1920年から本格的に商業用に醸造されるようになったという歴史のあるビール。
フルボディのビールを醸造しようとした修道士たちが、原材料の量を2倍にしたことから名付けられたウエストマール ダブル。
アルコール度数は7%、濃い褐色の色合いにローストしたモルトの香り、コーヒーのような苦味が特徴の、素朴な印象のビールです。
レーズンやバナナ、ダークチェリーのフルーティーな香りに、キャラメルのような甘み、軽い苦味とドライな後味。
ウエストマール トリプルは、1934年に最初に醸造されて以来「すべてのトリプル・ビールの母」と呼ばれています。
トリプルスタイルのビールは、通常の3倍の材料を使うことでハイアルコールに仕上げられており、普通はハイアルコールになればなるほど色は濃くなるのですが、こちらは黄金色。
バナナのようなフルーティーな香りに、きめ細かい泡が柔らかくとてもクリーミー。
フルーティーかつドライなビールで、甘味・旨味・苦味のバランスが整った複雑な味わいです。
Yasutaka Higaki 桧垣泰隆
目黒リパブリック Burger & Beer 目黒
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