スコットランド島々の蒸留所・アイランズモルトについて / 吉祥寺 Vision

アイランズモルト

吉祥寺のバーテンダーが、スコットランドの生産地域やディスティラリーをご案内している連載ブログです。
今回は、個性豊かで様々な特徴が楽しめるアイランズモルトについてご紹介します。

 

 

アイランズとは?

スコットランドの北西に位置するインナーヘブリディーズ諸島、アウターヘブリディーズ諸島、及びスコットランド北部に位置するオークニー諸島にある蒸留所をまとめてアイランズという地域のくくりになっています。
アイランズは、大変広い範囲に点在している島をまとめているため、気候風土などが大きく違うため、一概に「アイランズはこういう味」という形でまとめることができません。
なので、1つ1つの蒸留所の特徴をそれぞれ楽しめるという形になっています。
以下より、そんなアイランズモルトを生産する蒸留所と代表的な銘柄を紹介していきます。

 

タリスカー蒸留所(スカイ島)

タリスカー蒸留所は1830年創業の蒸留所で、創業者はマッカスキル兄弟です。タリスカーとは当時兄弟が住んでいた家の名前で、語源はゲール語とノース語で「傾いた大岩」「斜面上の大岩」です。その名の通り、タリスカー蒸留所近くには大きな斜めの岩があり、蒸留所のシンボル的な存在としてよくポスターなどに登場します。
ヘビリーピーテッド麦芽75%にノンピート麦芽25%をブレンドし、20〜25ppmのフェノール値で造られており、カリラやラガヴーリンよりは低いのですが十分にピート感を感じられるウイスキーとなっています。
最大の特徴は、初留釜につけられたラインアームの形状がU字型に2回曲げられていることと、U字の先のワームタブが屋外にあるということで、それにより外気にふれることでラインアームの中で冷やされ、重い成分が還流するため、スモーキーでスパイシーなフレーバーが強く出ることで、タリスカーの味わいの特徴でよく言われる黒胡椒の風味を生み出しています。

代表的なラインナップは、一番スタンダードな10年、若めの原酒をブレンドしてスパイシーさをましたストーム、ポート樽熟成のポートリーなどがあります。
特に10年はハイボールに燻製黒胡椒をふりかけた「スパイシーハイボール」という形で飲むのが最近流行っています。

 

タリスカー10年&エディション

タリスカー10年(左)・タリスカー ディスティラーズエディション(右)

 

トラベイグ蒸留所(スカイ島)

2017年創業蒸留所と、スカイ島に新しくできたばかりの蒸留所。トラベイグとは「海を見下ろす高台」という意味です。もともと1825年に建てられた古い農家があり、その建物を改造して造られました。その農家は建物の保存義務があったため、すべての屋根や石組みを一旦解体し、蒸留設備を入れて、また再び同じように組み立てるという手間のかかる工事をしたとのことです。
使用する麦芽は50〜75ppmのヘビリーピーテッドのみで、アイラより強いピートということで、今後のリリースが期待される蒸留所です。

 

ハイランドパーク蒸留所(オークニー諸島)

ハイランドパークはオークニー諸島のメインランド島にある蒸留所。1798年創業で、現在はマッカランと同じエドリントングループが所有しています。
オークニー諸島はもともとヴァイキングの支配が長く続いた場所で、そのため瓶やラベルのデザインにヴァイキング文様が多く使われます。
ハイランドパークの特徴は伝統的なフロアモルティングを現在でも続けていることで、製麦に使われるピートは同じ島のホービスターヒルという場所から切り出されています。ピートはもともとその土地に生えていた植物の成分によって大きく味わいが変わるため、アイラのピートとは違うどっしりとしたフレーバーが特徴となっています。フェノール地は40ppmくらいで、そこにノンピート麦芽をブレンドし、最終的には10〜15ppmくらいの麦芽に調整されます。
ただし、以前当店に入荷したことがあるボトルで、明らかに15ppmではなく40〜50ppmはあるだろうというものが来たことがあり、まれにブレンドせずに40ppmで製造している可能性もあります。

ハイランドパーク

ハイランドパーク12年(左)・ハイランドパーク 2000 17年 酒育の会(中央)・ハイランドパーク 2008 ダンカンテイラーオクタブ(右)

 

スキャパ蒸留所(オークニー諸島)

ハイランドパークと同じオークニー諸島メインランドにある蒸留所。創業は1885年ですが、それ以前から密造が盛んに行われていた場所と言われています。
スキャパ湾を見下ろす高台に位置するのですが、このスキャパ湾は第一次、第二次世界大戦の両方で戦略拠点として非常に重要な場所で、特に第二次世界大戦時にUボートが侵入してきて戦艦ロイヤルオークを魚雷で撃沈、その後当時の首相のチャーチルがUボートが侵入できないようにチャーチルバリアーという防壁を築いたことで有名な場所です。
スキャパ蒸留所で造られる原酒はノンピートで、最大の特徴は内部を改造したローモンドスチルという独特な蒸留器で蒸留することで、これにより非常にクリアな味わいが特徴です。
バランタインの原酒の一つとして大変重要な位置づけと言われており、バランタインの香りを嗅いだときの最初の爽やかな香りはスキャパの原酒の働きに寄るものだそうです。
シングルモルトとしては、現在はスキャパスキレンというボトルがリリースされています。

スキャパスキレン

スキャパスキレン

 

トバモリー蒸留所(マル島)

スカイ島とジュラ島の間にある島、マル島の蒸留所。トバモリーは島の中心地の漁港に面して建てられています。
創業は1798年で、語源はゲール語で「メアリーの井戸」です。
創業後何度もオーナーが変わり、その都度生産停止を繰り返していたのですが、2013年に現在のオーナーのディステル社が買収。現在に至っています。
ノンピートと35〜40ppmのヘビリーピーテッドの2種類の原酒を製造しており、その製造比率は45:55とピートのほうが多くなっています。
実際、ノンピートは長期熟成もので大変美味しいものが多くリリースされているのに対し、ヘビリーピーテッドは10年くらいの若い原酒で素晴らしいものが多く出ており、使い分けているのかも知れません。
ノンピートを「トバモリー」、ヘビリーピーテッドを「レダイグ」と言う名前でリリースしており、レダイグは当店でも大変人気となっています。

トバモリ―&レダイグ

トバモリー 21年 ADラトレー(左)・レダイグ 8年 プロヴェナンス(右)

 

アイルオブジュラ蒸留所(ジュラ島)

アイルオブジュラは1810年創業の蒸留所です。その後、1876年にオーナーが変更になり、そのタイミングで地主ともめたことで生産停止になるという自体になります。その際、それまでの蒸留機器がすべて島外持ち出し、一旦途絶えてしまいます。
1963年に島民の雇用のためにという目的で、3人の地主が出資して現在のアイルオブジュラ蒸留所です。
基本的にはノンピート麦芽で製造していますが、年に4週間だけ40ppmのヘビリーピーテッド麦芽でも製造しており、商品化されています。

 

アビンジャラク蒸留所(ルイス島)

ルイス島はアウターヘブリディーズ諸島最大の島で、面積は東京都とほぼ同じ大きさ。人工は19000人ほどでその半数が中心地のストーノウェイに集中しており、ストーノウェイを少し離れると荒涼とした不毛の大地が続いているような場所です。ちなみにヘブリディーズとはヴァイキングの言葉で「地の果て」「この世の果て」を意味する言葉だそうです。
そんなルイス島にあるアビンジャラク蒸留所は2008年創業。
最大の特徴は「ヒルスチル」と呼ばれる密造用のスチルをそのまま大きくしたものを使用。また、麦芽もルイス島産を使用しており、ルイス島産ですべてをまかなっているそうです。というのも、生産量がキルホーマン(アイラで最も生産量が少ない)の半分程度しかなく、十分まかなえる生産量とのこと。
すでにシングルモルトでリリースはあるのですが、まだ当店には入荷していません。

 

アイルオブハリス蒸留所(ハリス島)

ハリス島は上記のルイス島のすぐ南に位置する島。アイルオブハリス蒸留所は2014年創業の新しい蒸留所で、モルトウイスキーも作っているのですが、どちらかというと現在はジンで有名になっている蒸留所です。
「ハリスジン」という商品で世界中で販売されており、漬け込むボタニカルにシュガーケルプ、昆布を使用していることから、日本人になんとなく馴染みのあるフレーバーともなっています。

 

ロックランザ蒸留所/アイルオブアラン(アラン島)

ロックランザ蒸留所はアラン島という、スコットランド本土とキャンベルタウンの間のような場所に位置する島にあります。
もともとはアイルオブアラン蒸留所と名乗っていたのですが、アラン島に第二蒸留所を建設し、呼び分けをするために蒸留所名をロックランザに変更しました。
ノンピートとピーテッドの両方を製造していたのですが、ピーテッドを第二蒸留所のラグに任せ、現在はノンピートのみを製造しています。
現在はロックランザのラベルのものもあるそうなのですが、現在当店には旧ボトルのアラン表記のものがあります。

アラン18年

アラン18年

 

ラグ蒸留所(アラン島)

ラグ蒸留所は2019年にロックランザ蒸留所と同じオーナーが創業した新しい蒸留所です。
もともとロックランザで製造されていたピーテッドモルトを、こちらのラグで製造することで、機能分けをしています。
また、様々な麦芽を使って実験的に蒸留するという、研究所的な位置づけも持たせるようで、今後様々なウイスキーがリリースされたり、またはロックランザやラグの新商品に新技術が反映され、より良いウイスキーが造られる可能性を秘めています。

 

Wataru Kobayashi  小林渉

Vision  Whisky bar 吉祥寺
0422-20-2023
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