スコッチウイスキーの聖地・アイラ島の蒸留所 / 吉祥寺 Vision

2021/10/11

アイラ蒸留所

スコッチウイスキーの聖地と呼ばれるアイラ島。
今回は蒸留所自体の紹介をしていきたいと思います。
紹介順は、蒸留所の古い順で行きましょう。

 

 

Bowmore  ボウモア

ボウモア蒸留所は1779年創業の蒸留所。現存するアイラ島の蒸留所では最も古い蒸留所です。
スコッチの全蒸留所でも1775年創業のグレンタレットについで2番目に古い蒸留所です。
名前の由来はゲール語で「大いなる岩礁」。モアというのが大きいを意味する単語です。

ボウモアの特徴は伝統的なフロアモルティングを行っていることで、独自のピートの採掘場から取ったピートで乾燥を行っています。
採掘場がアイラ島中央部の高台にあるため、他の採掘場とは違う成分になっていることから、アイラの他のピートよりも穏やかな風味となっています。
自家製麦比率は約30%で、それ以外の麦芽はスコットランド本土のシンプソンズ社から仕入れています。
フェノール値の強さは25〜30ppmで、ポートエレンが作っている34〜38ppmよりも低めとなっています。
ストレートヘッド型のポットスチルから造られる蒸留液は他のアイラの蒸留所よりやや高めの度数のミドルカット(中留)で、度数が低いとピートの成分が多くなるため、製法上でもピート抑えめです。
そのため、麦芽由来の風味がピートに押されること無く、甘さとピートのバランスが素晴らしい、上品なモルトが多いため、「アイラの女王」などと称されます。
年間生産能力は200万リットルと、アイラ島の中ではやや少なめです。

代表的なラインナップは、一番スタンダードなボウモア12年。
それ以外に、限定ボトルや企画リリース品、ボトラーズでも多数リリースがある蒸留所です。

 

ボウモア12年
ボウモア 12年

 

Laphfoaig  ラフロイグ

1815年創業の蒸留所で、名前の由来はげゲール語で「広い入り江の美しい窪地」とのこと。
アイラ島の南岸に、ラフロイグ、ラガヴーリン、アードベッグの3つの蒸留所が並んでおり、この3つの蒸留所は「キルダルトン3兄弟」などと呼ばれたりします。

ラフロイグは、ポートエレンや本土の精麦工場から35〜40ppmの麦芽を仕入れている他、フロアモルティングによる自家製麦も行っており、その自家製麦用のピートの採掘場が海藻の成分を多く含むらしく、そこから生まれる独特のフレーバーがラフロイグの特徴となっています。
自家製麦比率は15%と低いのですが、強めにピートを焚き、ポートエレンの麦芽とブレンドすることにより少し強めのピート感を出しています。
よく、燻製、消毒、病院の香り、正露丸などと表現される唯一無二のフレーバーは、「好きな人は徹底的に好き。嫌いな人は徹底的に嫌い」と言われ、チャールズ皇太子が大好きで、プリンス・オブ・ウェールズのロイヤルワラントを持っています。
ちなみに、正露丸の香りというのは当然海外では通用しないテイスティング表現ですが、「正山小種(ラプサンスーチョン)」という燻製した中国茶がそのフレーバーに近いことから、海外のテイスティングコメントではまれに見かけます。

代表的なラインナップは、スタンダードの10年。他はボトラーズでもリリースされることも多いのですが、最近は蒸留所名を伏せてリリースされることが多いです。
その場合は、ラフロイグ中興の祖と言われる女性の蒸留所長のベッシー・ウィリアムソンにちなんで「ウィリアムソン」と言う名前でリリースされることが最近は多いです。

 

ラフロイグ 10年
ラフロイグ 10年

 

ウィリアムソン 2005 12年 クーパーズチョイス
ウィリアムソン 2005 12年 クーパーズチョイス

 

Ardbeg  アードベッグ

1815年創業の蒸留所で、アイラ島の住人のジョン・マクドゥーガルによって建設されました。
それ以降マクドゥーガル家によって運営されてきましたが、1973年にハイラムウォーカー社とDCL社によって買収されました。
しかしながら1981年にウイスキー不況によって閉鎖が決定。
1989年にアライド社が買収し操業再開したのですが90年代になっても年に2〜3ヶ月程度しか蒸留されませんでした。
当時アライド社はラフロイグも所有していたため、ピートの強い2つの蒸留所は不要だったため、そのようなイレギュラーな運営となり、結局1995年に再度閉鎖。
1997年にグレンモーレンジィ社が買収し、それ以降のモルトブームに乗っかり、挑戦的なボトルを多数リリースすることで復活。現在は「アードベギャン」と言われる熱狂的なアードベッグファンを生み出しました。

名前の由来はゲール語で「小さな岩礁」。アードというのが小さいを意味する言葉です。
ピートの強さは60ppmで、アイラ島で通常リリースされているものの中では最も強く、ポートエレンから購入しています。
ランタンヘッドの蒸留器に精留器と呼ばれるよりクリアなウイスキーを造る機械がつけられており、これにより「ピートは強いが、実は味わいはライト」なウイスキーとなっています。

代表的なラインナップは、スタンダードの10年、シェリー樽で追加熟成されたウーガダール、ヨーロピアンオークで追加熟成されたコリーヴレッカン、5年熟成のウィービースティ、シェリー樽をブレンドしたアンオーなど、多数リリースされています。

 

アードベッグ 10年
アードベッグ 10年

 

アードベッグ ウィービースティ 5年
アードベッグ ウィービースティ 5年

 

Lagavulin  ラガヴーリン

1816年創業の蒸留所で、名前の由来はゲール語で「水車小屋のある窪地」。
もともとはアイラ島の密造の中心地だった場所らしく、10以上の密造所が密集していたそうです。

創業者はジョン・ジョンストンですが、ジョンの死後、買収を重ね、エジンバラ出身のジェームズ・ローガン・マッキーがオーナーとなります。
このジェームズのもとで修行したのが甥のピーター・マッキーで、ジェームズの死後ラガヴーリンを主要原酒とした「ホワイトホース」を発売、当時としては飲みにくいアイラをキーモルトにしたということで珍しいブレンデッドウイスキーでした。
それが現在に残り、大々的に販売されているのですからすごいことです。
ピーター・マッキーのホワイトホース社がDCLに買収され、現在はディアジオが運営しています。

ピートの強さは34〜38ppmのポートエレン製で、オニオンヘッドと呼ばれるくびれのない蒸留器と、その蒸留器が非常に小さいという特徴から、重くどっしりとした風味が特徴。

代表的なラインナップはスタンダードの16年、最近スタンダード品となった8年、それと年1回限定でリリースされる12年のカスクストレングスがあります。

 

ラガヴーリン 16年
ラガヴーリン 16年

 

ラガヴーリン 12年 カスストレングス
ラガヴーリン 12年 カスストレングス

 

Caol ila  カリラ

1846年創業の蒸留所で、名前の由来はゲール語で「アイラ海峡」。アイラ島と隣の島のジュラ島の間の海峡を意味しており、その近くに建設された蒸留所です。
特徴はアイラ島で最も生産量が高い蒸留所ということで、650万リットルを誇ります。
所有している会社はディアジオで、ディアジオは多くの蒸留所を抱え、多くのブレンデッドウイスキーをリリースしており、その中でもトップブランドのジョニーウォーカーの原酒の一つがカリラとなっており、ジョニーウォーカーブランドを支える蒸留所です。
ピートの強さは34〜38ppmで、これはラガヴーリンで使用されている麦芽と同じものです。
同じ麦芽なのに大きく味が違うのは、各々の製造ポリシーに則った蒸留設備や手法の違いによるもので、比較が大変おもしろい2つの蒸留所です。

大規模な蒸留所のため、設備も大きく、1回の仕込み量もラガヴーリンの6倍を一気に仕込み、それを大きなストレートヘッド型のポットスチルで蒸留します。
この蒸留器の大きさが蒸留液が上部にたどり着くのに時間がかかり、軽い味わいを作り出します。

代表的なラインナップは、12年、年1回限定リリースのディスティラーズエディションなどがあります。

 

カリラ 12年
カリラ 12年

 

Bunnahabhain  ブナハーブン

1881年創業の蒸留所ですが、実際の蒸留は1883年からと言われています。
名前の由来はゲール語で「河口」で、仕込み水を取っているマーガデイル川の河口に位置しているからです。

ブナハーブンはもともとはアイラモルトの中ではピート軽めのだったのですが、第二次大戦後に完全にノンピートになりました。
当時ブナハーブンはカティーサークの原酒で、カティーサークに軽いウイスキーを求められたというのが理由とのことです。
しかし1997年ころから試験的にピーテッドを作るようになり、現在は約40%がピーテッド麦芽だそうです。
ピートの強さは34〜38ppmでラガヴーリン、カリラと同じです。

代表的なラインナップは12年。
最近ではボトラーズでピーテッドの若いもののリリースが多く、どれも大変素晴らしい物が多いです。

 

 ブナハーブン 12年
(左)ブナハーブン 12年(左)
(右)スタオイシャ 2013 5年 アトマイザー22 *当店オリジナルボトルのブナハーブンヘビーピート

 

Bruichladdich  ブルイックラディ

ブナハーブンと同じ1881年創業の蒸留所。
ブルックラディの情報では、キルホーマンができる前は最新の蒸留所とのことのため、タイミング的に同じ年ですがブナハーブンよりあとにできた蒸留所と思われます。
ブルックラディはもともとハーヴェイ社の創業でしたが、度重なる買収によりオーナーが何度もかわり、その都度休業、再開を繰り返していました。休業期間のほうがむしろ多いと言う状況です。
それが2000年にマーレイマクダヴィッド社が買収、マーク・レイニエ氏がオーナーになったことで大きく状況が変わります。
アイラ島の伝説の男と言われ、幼少期からウイスキー製造に関わってきたジム・マッキューワン氏を製造責任者に迎え、ジムさんがそれまでブルックラディに関わっていた多くの職人を呼び戻し、再建計画が練られて、2001年に復活します。
現在は2012年にレミーコアントロー社が買収しましたが、マーク・レイニエ、ジム・マッキューワンの思想がそのまま受け継がれ、変わること無く製造を続けています。

大きな特徴がいくつかあるのですが、一つはテロワールというワインの世界で使われる概念をウイスキーに持ち込んだこと。
テロワールとはざっくりとした認識で「その土地でしか味わえないその土地の味」と言う意味で、スコットランド産、アイラ島産の麦芽にこだわりを持っています。
もう一つが、創業当初からの古い機材を直しながら使い続けるということで、最新機材を入れないことです。
それによりその当時の味を守り続けられるほか、大変手間がかかるため人手が必要になるのですが、アイラ島の雇用を守ることにもつながっています。
さらに、創業当初からの伝統的なノンピート、40ppmのポートシャーロット、焚けるだけピートを焚いたオクトモアの3種類をリリースしており、その挑戦的なスタイルから多くのファンを集めています。

 

ブルックラディ 10年
(左)ブルックラディ 10年ブルックラディ
(中央)ブルックラディ アイラバーレイ
(右)オクトモア 09.3

 

Kilchoman   キルホーマン

2005年創業の新しい蒸留所。
大変生産量も少ないのですが、設備増強を続けており、今後製造量が上がっていく見込みとなっています。
大きく2種類のラインナップがあり、50ppmの麦芽で造られているものと、20ppmの麦芽で造られているものです。
50ppmの麦芽は自家製麦ではなく、他社から購入した麦芽を使用しており、こちらが通常ラインナップとしてリリースされています。バーボン樽主体のマキヤーベイと、シェリー樽主体のサナイグの2種類があります。
20ppmのものは、キルホーマン蒸留所内の自家製麦の麦芽で、アイラ島産の麦を使用しており、100%アイラというシリーズとしてリリースされています。

 

キルホーマン マキヤーベイ
キルホーマン マキヤーベイ

 

キルホーマン サナイグ
キルホーマン サナイグ

 

Ardnahoe  アードナホー

2018年創業、蒸留開始が2019年1月と大変新しい蒸留所。
オーナーはボトラーズのハンターレイン社で、名前の由来はゲール語で「高い丘の上」という意味です。
なんとこのアードナホー蒸留所は、ブルックラディ蒸留所を再建させたジム・マッキューワンが、ブルックラディを若い職人に蒸留責任者を譲った後、引退していたのですが、突如アードナホー蒸留所の責任者になったということで、大変注目の蒸留所です。

内容も、やはり同じ人が製造に関わっているので、アイラ島でしか味わえない味、ライトピート、ヘビーピート、スーパーへビーピーとを作る予定というコメントが出ていたりと、ブルックラディとかなり似通った製造ポリシーになりそうです。
製造設備の違いなどで、どれだけの差が出てくるか、大変楽しみな蒸留所です。
まだ蒸留開始から3年経っていませんので、今後のリリースに期待です。

 

Wataru Kobayashi  小林渉

Vision  Whisky bar 吉祥寺
0422-20-2023
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