モルトウイスキーの製造・製麦から糖化について / 吉祥寺 Vision

モルトウイスキーの製造製麦から糖化

モルトウイスキーの製造について解説していきます。
長いので3回に分けて記載します。

 

 

1. モルトウイスキーの製造工程の全体像

モルトウイスキーは、以下の工程を踏みます。
それぞれの工程について、書いていきたいと思います。

1, 製麦
2, 糖化
3, 発酵
4, 蒸留
5, 貯蔵
6, 瓶詰め

 

2. 製麦

製麦は、大麦を発芽させ、熱を加えて成長を止め、麦芽を作る工程です。
原材料の大麦については、原材料の解説の記事をご参照ください。
大麦を麦芽にすることで、麦芽の中の糖化酵素が活性化され、デンプンがより小さく分解され、発酵の工程で酵母が糖分を食べてアルコールを作るための準備をします。

モルトウイスキーの製造・原材料について / 吉祥寺 Vision

製麦の中の工程は、以下の工程を踏みます。

1, 収穫
2, 風燥
3, 保管
4, 選粒
5, 浸麦
6, 発芽
7, 乾燥
8, 除根

収穫は、そのまま名前の通り、(1)麦芽を収穫します。
収穫した麦を、水分が12〜15%程度になるように(2)風燥させます。
大麦は、収穫直後はすぐに発芽しないため、休眠期間が必要になります。そのためサイロで(3)保管します。通常この保管期間は2〜3ヶ月ですが、この期間がもったいないと考えた人がいるらしく、休眠期間を短くするという品種改良が行われ、現在は休眠期間が無くても発芽する麦があるそうです。ただしその品種も均一に発芽しないなども問題が発生しており、そういう品種でも少しの休眠期間を設けるようです。
その後、吸水や発芽を均一に行うために、(4)選粒といい、大きさを3段階程度に分ける作業を行います。
分けられた大麦を浸麦槽に入れ、仕込み水に浸し、その後通気して十分な空気を与えるという作業を繰り返します。これを(5)浸麦といいます。この作業は30時間〜60時間かけて行われます。
その後、高湿度かつ低温の状態で酸素を供給し、5日〜1週間かけて(6)発芽を促します。このときに糖化酵素が活性化されます。この間、大麦の発芽や換気が均等に行われるように、絶えず撹拌を行います。
発芽された麦芽は、キルンと呼ばれる乾燥塔に移動され、熱源を当てることで(7)乾燥させ、水分を4%〜5%に下げて保存性を高めます。
その後、水分の再吸収を防ぐことを目的に、(8)除根を行います。

さて、上記の工程の中で、特に大きく各蒸留所で異なる部分である、(6)発芽と(7)乾燥について、さらに詳しく解説したいと思います。

 

3. 発芽させる手法について

ラフロイグ

発芽のポイントは、「均等に行われるようにする」というところで、そのために常に撹拌が必要になります。
もともとスコットランドの蒸留所では、各蒸留所で製麦されていたと考えられ、産業革命以前の時代は手作業で行われていました。
その手作業で行う方法を「フロアモルティング」といいます。

フロアモルティングとは、コンクリートの床に大麦の麦芽を敷き詰め、そこで発芽させます。
その際に、蒸留所の職人がスコップで絶えず持ち上げては下ろすという形で延々と手作業で撹拌を行います。これを5日〜1週間かけておこなう必要があり、大変な重労働です。そのため、フロアモルティングを担当する職人は右肩がガチガチになり、痛みが絶えないそうです。それを風刺してそういう状態のこと、そういう状態の職人さんのことを「モンキーショルダー」というそうです。そういう名前のブレンデッドモルトウイスキーがありますが、それは原酒の一つにフロアモルティングを実施している蒸留所が含まれていることに由来します。

しかし上記のように大変手間がかかり、重労働で、職人さんたちの労働環境の改善が図られ、現在は機械化が進んでいます。
フロアモルティング以外に、ドラム式、サラディンボックス式という方法があり、これは機械で自動的に撹拌を行い続ける方法です。そして、それを専門に行う製麦業者ができ、これを「モルトスター」といいます。現在はほとんどの蒸留所がモルトスターから麦芽を購入しています。人力のフロアモルティングより、機械化されたドラム式やサラディンボックス式のほうが品質が安定するというメリットもあります。

ただし、伝統的なフロアモルティングにもやはり魅力があり、現在も続けている蒸留所がいくつかあります。
・スプリングバンク
・ボウモア
・ラフロイグ
・キルホーマン
・バルヴェニー
などが有名です。現在、フロアモルティングを復活させようという活動をしている蒸留所もあり、今後増えていく可能性があります。
また、スプリングバンク以外の蒸留所は、モルトスターから麦芽を購入し、蒸留所でフロアモルティングを行ったものとブレンドして使用していますが、スプリングバンクだけは100%自家製麦となっています。

 

4. 乾燥に使われる熱源

乾燥の工程では熱源が必要になります。
多くは、無煙炭やブタンガスなど、煙が出ない熱源を使用しますが、一部ではピートを使用します。
ウイスキーの味わいに大きく影響するピートについて、解説していきます。

 

5. ピートとは

ピート

ピートは、日本語で泥炭といいます。
シダやコケ類、草、灌木、ヘザー(スコットランドに多く生えている低木)などが堆積し、1万5千年くらいかけてできる泥状の炭で、これを切り出し乾燥させることで燃料となります。
スコットランドでは地層がピート層な場所が多いため、民家で一般的に燃料として使われていました。
そのため、手短に手に入る燃料であるピートを麦芽の乾燥に使用することが多かったのですが、ピートを使用すると煙が出て、その煙が麦芽に吸収されることにより、スコッチ独特のスモーキーフレーバーが付きます。
これが飲みづらさを出すということから、ピート以外の燃料も使われ、一般的にはピートがほとんどもしくは使われていないウイスキーが主流となっていますが、スモーキーフレーバーは独特の魅力があり、今でも使用する蒸留所もあります。
スモーキーフレーバーの強弱を表す数値として、フェノール値が用いられ、単位はppm(100万分の1を表す単位)で表されます。
通常、ライトリーピーテッドは2〜5ppm、ヘビリーピーテッドは20ppm以上と言われます。その間あたりの強さをミディアムとかと表現されますがあまり一般的では無いようです。

ピートは、水分が多く含まれている状態の麦芽に使用し、水分に十分に燻煙が吸収されたら無煙炭などの煙の出ない熱源に差し替えられ、そのタイミングによりフェノール値の強さをコントロールします。

ピートはスコットランドで幅広く取れますが、1万5千年くらいまえにその地域にどのような植物が生えていて、どういう比率かによって燻煙に含まれる成分が変わります。そのため、採掘される地域の特徴が出ます。
アイラ島で造られるウイスキーはピートのフレーバーが強く造られているものが多いですが、それはアイラ島のピートの成分がそれだけ魅力的な味になるからです。

ピートの燻煙にはフェノール化合物が含まれ、代表的なフェノール化合物とそれに対応する香りを下記に記載しておきます。
フェノール→薬品臭
α−クレゾール→消毒液様
グアイアコール→焦げ臭
o-エチルフェノール→タール様

他にも色々なフェノール化合物が含まれるのですが、これらがどういう比率で麦芽に入るかによって、味わいが変わります。

ピートフェノール

 

6. 糖化

マッシュタン

糖化は、麦芽を粉砕し、温水にした仕込み水と混ぜて粥状にし、発酵に必要な糖分が十分に造られた麦汁を抽出する作業です。
この工程の中で、糖化酵素が十分に働き、発酵の工程で酵母が食べられるサイズの糖分にデンプンが分解されます。

糖化の工程は、
1,麦芽の粉砕 2,糖化槽による麦芽の抽出 3,冷却
になります。

まず、麦芽をモルトミルと呼ばれる機械で粉砕します。モルトミルにはいくつかの種類がありますが、モルトウイスキーに使われる代表的な種類はローラーミルというものです。
回転する2本のロールの中を通過させて粉にするのですが、このローラーの幅を調整することにより粉砕の粒の大きさをコントロールします。
粉砕された麦芽は、大きさにより3つの種類に分類されます。一番大きいものを「ハスク」、その次を「グリッツ」、最も細かいものを「フラワー」といいます。
この3つの比率が、2:7:1になるように調整するのが一般的とされていますが、麦の品種やコンディションを見て職人さんの判断で比率を変えることも多くあります。
いい麦汁を取るにはグリッツが多いと良いらしいのですが、ハスクやフラワーにもそれぞれ味に影響する役割があります。

粉砕された麦芽をマッシュタンと呼ばれる糖化槽に入れ、温水を加えます。
この際、温水は70℃以上にならないように調整します。70℃以上になると、せっかくの糖化酵素がうまく働かず、特に75℃以上になると失活してしまうためです。
温水を加えてしばらくすると、酵素反応が進行し、デンプンが糖に分解されます。
その間に45分〜90分ほどで一番大きい粒のハスクが沈殿し、その沈殿物が濾過層となり、その濾過層を通して底部より麦汁を引き抜くことで、濾過されたクリアな麦汁が取れます。

引き継いた麦汁を熱交換器にかけて冷却します。これは次の工程の発酵の際に、温度が高い状態で酵母を入れると酵母が死んでしまうためです。

さて、次は発酵、そして蒸留となります。
次回お楽しみに。

 

Wataru Kobayashi  小林渉

Vision  Whisky bar 吉祥寺
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