秩父蒸留所 ジャパニーズウイスキー解説評価 / 吉祥寺 Vision

2023/11/21

秩父

秩父蒸留所について、徹底解説していきます。

 

 

秩父蒸留所の地理

生産国:日本
地域:埼玉県

 

秩父蒸留所データ・蒸留設備

所有者:ベンチャーウイスキー
設立年:2004年
年間生産能力:
仕込水:大血川
ワンバッチ:400キロ
発酵槽:ミズナラ
蒸留器:初留1基、再留1基
熟成庫:

 

秩父蒸留所の解説

秩父蒸留所は2007年に開設し、翌年2月より蒸留を開始した蒸留所で、創業者は肥土伊知郎氏。
当時、日本のウイスキーは1980年代にピークを迎えていこう6分の1まで減少し、冬の時代でしたが、そんな中の新規参入の蒸留所でした。

創業者の肥土氏は、埼玉県秩父市で代第続く造り酒屋の生まれで、実家がウイスキー造りを始めたのは社名を東亜酒造と改めた祖父の代から。
埼玉県羽生市に蒸留所を建設し、ゴールデンホースなどのウイスキーを作っていました。
大学卒業後は大手酒類メーカーで営業職をしていましたが、その後家業を継ぐ形で羽生蒸留所に入りました。
しかし業績の悪化から会社は経営譲渡され、蒸留所も取り壊されることになり、残された数百樽のウイスキーも期日内に引き取り手が現れなければ廃棄される予定でした。
肥土氏はこれを自ら引き取り、笹の川酒造に保管を依頼します。
そして2004年にベンチャーウイスキーを創業、2005年より上記の樽に様々な樽で後熟を施した「カード」シリーズを発売、2014年までに54種(58本)が発売されました。

羽生蒸留所の原酒はいずれなくなることを見越した肥土氏は自身でウイスキーの蒸留を計画、2008年より稼働させました。
マッシュタンと蒸留器はフォーサイス社製で、マッシュタンは2400リットル、蒸留器は2000リットルとかなり小さく、1回の仕込みも400kgという少量生産の蒸留所としてスタートしました。

発酵槽は東北産のミズナラ材を使用しており、これはこの木を好んで住み着く乳酸菌が秩父らしい香味を作る一つの要因と言われています。

蒸留器はストレートヘッドでスチームコイルによる間接加熱で、5時間かけて蒸留、平均70%のミドルカットを取ります。

樽詰めは約63%で熟成庫はダンネージ式6棟とラック式が1棟、合計で30000樽を貯蔵出来ます。

また、2013年には蒸留所の敷地内にクーパレッジ(樽工場)を設置、羽生市にあったマルエス洋樽が閉鎖となった際にすべての機材を受け継ぎ、技術者から技術を学び、現在では樽の補修や新樽の製造も行っています。

2015年にはフロアモルティングを開始、現在は年間10〜15トンの麦芽を製造しています。

さらに2019年に秩父蒸留所の5倍の生産能力を持つ秩父第2蒸留所を開設。
こちらで生産量を安定させ、既存の秩父蒸留所ではクラフトらしい様々な作りにチャレンジしていく予定です。

さて、私が先日秩父蒸留所に見学に行った際に質問した内容が、「秩父蒸留所の近年のリリースと初期のリリースでは大きく味が違い、私としてはかなり良くなっているように感じるが、これはミズナラの発酵槽の乳酸菌が近年安定してきていい効果を出しているなどの要因があるのでしょうか?」
ということ。
これに対し、「実は初期の頃はミズナラの発酵槽は都度スチームで洗浄殺菌していたが、途中からより強く乳酸菌の影響を与えるためスチーム殺菌をやめた。これが大きい効果が出ている」との回答を頂きました。

このような形でどんどん変化し進化する蒸留所で、日本の新規蒸留所を引っ張っていく存在として輝いています。

 

秩父蒸留所のラインナップ

秩父エイコーン

秩父 2015−2023 エイコーン シードルカスク

日本の輸入業者、ボトラーズとして知られているエイコーンからリリースされたシードルカスクのもの。
これまで私が飲んできた秩父と比較するとかなりフルーティで、やや南国フルーツ系の味わいがします。

 

秩父蒸留所の年表

2004年 埼玉県秩父にベンチャーウイスキー設立。旧羽生蒸留所の原酒を笹の川酒造に移管
2005年 イチローズモルト羽生1988、カードシリーズ第一弾を発売
2006年 イチローズモルト・カード・キングオブダイヤモンズが英国ウイスキーマガジン誌のジャパニーズ特集で最高得点・ゴールドアワード受賞
2008年 秩父蒸留所生産開始
2009年 ニューボーンシリーズ、シングルグレーン川崎、ギンコー発売
2010年 MWR、ワインウッドリザーブ、ダブルディスティラリーズ、ザ・ファイナルヴィンテージオブハニュウ10年を発売
2011年 秩父ザ・ファースト、モルト&グレーン発売。地元農家と大麦栽培を開始、試験的に自家製麦を開始。熟成庫を新設
2012年 ザ・ピーテッド、ザ・フロアモルテッド発売
2013年 クーパレッジ(樽工場)を設置。秩父オンザウェイ、秩父チビダル発売
2014年 カードシリーズ ジョーカー2種発売、54種(全58本)の完成となる。地元産大麦ゴールデンメロン埼1号を有機栽培により復活させる取り組みを始める
2015年 香港のオークションでカードシリーズ54本が380万香港ドル(約5900万円)で落札される。イチローズモルト清里フィールドバレエ26周年(第2弾ボトル)発売。本格的なフロアモルティングを開始
2018年 秩父山地のミズナラ群生林で伐採したミズナラ材で樽づくりを開始
2019年 第2蒸留所で蒸留開始
2020年 秩父ザ・ファーストテン。イチローズモルト&グレーン505発売
2021年 イチローズモルト&グレーン ジャパニーズブレンデッドウイスキー リミテッドエディション2021、イチローズモルト ダブルディスティラーズ秩父×駒ケ岳2021、イチローズモルト&グレーン クラシカルエディション発売。初のラック式となる第7熟成庫完成。イチローズモルト・カードシリーズ全58本が国内オークションで1億円で落札される
2022年 イチローズモルト 秩父ザ・ピーテッド2022、イチローズモルト&グレーン ブレンデッド ジャパニーズウイスキー リミテッドエディション2022発売

 

Wataru Kobayashi 小林渉

Vision Whisky Bar ヴィジョン
吉祥寺/東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-8 耶馬ビルB1
0422-20-2023
Facebook
Instagram

Related Posts

  • ブログサムネイル画像

    2024年4月5日

    WHISKY BAR Vision Japanese whisky

    スコッチモルトウイスキーソサエティ 78.72 贅沢なハギス / 吉祥寺 Vision

  • ブログサムネイル画像

    2024年3月26日

    WHISKY BAR Vision Japanese whisky

    吉田電材蒸留所 1年熟成 カラム3&カラム7 バーボンスタイルのジャパニーズグレーンウイスキー / 吉祥寺 Vision

  • ブログサムネイル画像

    2024年1月16日

    WHISKY BAR Vision Japanese whisky

    嘉之助蒸留所 スリーリバーズ20周年記念ボトル 焼酎樽フィニッシュ / 吉祥寺 Vision

  • ブログサムネイル画像

    2023年2月15日

    WHISKY BAR Vision Japanese whisky

    グラスゴー蒸留所 スコッチモルトウイスキー解説評価 / 吉祥寺 Vision